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2010年 12月 22日
初日の午後、遅れて申し訳ないですとトラック便が着く。 尾道から作品到着。 頑丈な木箱に梱包されて、「i・NU」と題された縦横1m強の立ち犬の彫刻。 「鳥」と題された小さな木の彫刻が11個入っている。 「i・NU」は斜め前方を仰ぎ、位置は2階吹き抜けの西窓に向けて会場 中央に置くように指示がある。 その視線の先に「鳥」を梁から吊って宙に浮かせる。 大きめの「鳥」を2個2階窓に吊り、下の「i・NU」との間を他の「鳥」が 散らばるように吊る。 細かな位置の決定は、多分作者が最終的に決めるだろうと思いながら、 私なりに展示を完了する。 途中心配したのだろう、尾道の野上さんから電話が入る。 先ずは無事着いたことに安堵したようだ。 30日帰省という。 展示を終え、あらためて作品を見る。 素直な作品である。 「i・NU」は文字通り精悍な焦げ茶の犬である。 立ち上がり斜め前方上を見詰めている。 その視線の先に小さな木の鳥たちが浮いている。 西窓の光を仰いでいるこの犬は彼自身の表象でもあるのだろう。 精悍で引き締まった黒い身体。 それは日々労働に勤しむ自らの日常の肉体そのものに見える。 しかしその視線は中空を望み、窓外の光を追っている。 鳥たちはその視線の軸を顕す、まあるい光の魂のようである。 今回の製作は本当に楽しかったです。 30日、増やすかもしれません。 末尾に作者はそう書いていた。 野上裕之さんは、身体性の強い表現者である。 学生時代は「ぼくでん」と題して、ひたすら自転車のペダルを漕ぐ 自家発電のパフ―マンスをしたり、大学近くののグランドをひたすら 穴掘りをして、そこから出てきた廃棄物を展示する「もぐら」展をしていた。 転機となったのは映像作家の大木裕之との出会いで、自らの身体の 形を床に象り、そこを蝋燭で埋め炎で埋めたインスタレーシヨンを 見せた時である。 身体そのものを使うパフオーマンスから、その身体を一度外側から 対自化する視座へと転位したのだ。 さらに最近の作品は、溶かした鉛を巨大な木型に流しこみ、そこで 造られた形を壁に展示していくという、よりモノの創生に近付いた表現 行為を見せている。 今回の作品は、身体や溶かした鉛という素材の直接性からさらに、 具象的で抽象性を帯びた心象性の濃い作品となっている。 それは彼自身の生活上の変化とも重なって、地を踏みしめて立つ 「i・NU」の造型の力強さと、その視線を顕す「鳥」の造型として一体化 されている。 多分この作品の眼目は、「i・NU」と「鳥」の間にある宙を見詰める見えない 磁場にこそあるのだろう。 極めて身体性の強いこの作家は、今回ある意味初めて見えない身体を 視線として表現化しようと試みているのかも知れない。 それは彼自身が今生活に根を下ろし、その上で視線というメタフイジックス を、内から梢の先のように宙に放っているからである。 +野上裕之展「鳥を放つ」-12月21日(火)-1月16日(日) am11時ーpm7時:月曜・元旦休廊。 テンポライースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-12-22 12:50
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Comments(2)
中森さんの表現から作品とそこに現れた空気が
さーっと目の前に浮かんだ気がしました。 ぜひ本当の目の前に感じてみたくなりました。 日程的になかなか乳飲み子連れてゆけそうにありません。 またぜひ個展のうつろいを記録してください。
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大久保彩織さん>早速にありがとうございます。
土田さんの時から、野上くんを良く知る大久保さんには 是非立ち会って欲しく思います。 正月元旦以外は定休日を除き展示しています。 赤ちゃん連れて来て下さいな。 |
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