ここ2,3度部屋に帰ると、明かりが点いている。
朝出掛けに必ず消して出るのだが、不思議だ。
室内に異常はない。
明かりだけが点いている。
遠くから誰かが遠隔操作で点けているのかしら。
留守中に誰かが入って、消し忘れて行くのかしら。
暗い朝が多くなってきたので、自分自身が消し忘れて出たのかしら。
少し薄気味悪くなって、今朝はきちっと確認して部屋を出た。
いつか女房が死んだ後気が動転して電気代が未納を失念した事がある。
その後電源を断たれた事があった。
すぐにコンビニで支払いを済ますと、たちまち電気が点いた。
マンシヨンの一室だけピンポイントで操作できる、現在の管理機構に
気づかされ吃驚する。
帰宅して壁のスィッチを押して電気の点かない部屋も淋しいが、
誰も居ないのに灯りの点いている部屋も変に寂しい。
盗るものとて、何もない孤独な室内である。
孤独ななにかの魂が、漂泊しているのかも知れない。
大荒れの今朝風強く、ビルの陰にはさらに強い風が落ちている。
気温は高めで、路面の凍てついた残氷が融け足を滑らす。
岡部亮展もあと一日。
昨日来たMさん夫妻が、岡部亮私家版沖縄古代城壁写真集に
すっかり感動し、さらに今回の豆の莢と種子の新作を高く評価してくれる。
1999年沖縄に滞在した岡部亮の原点を今に繋げ、理解を深めたからだ。
たったひとりの小さな一歩。
その本質的な歩行を、こうしてひとりでも感受してくれれば、この展覧会は
大きな意義がある。
前回の個展から7年の歳月を経て、空いた部屋に灯が点る。
彫刻家岡部亮の漂泊する魂に、灯りが点っている。
私の部屋の怪談めいた灯りとは違い、この彫刻家の魂の灯りは、消しては
ならないのだ。
今日明日最後に仕上げられる作品は、今度の個展の深い凝縮の一点と
なる事だろう。
*岡部亮展withシミー書房「詩の本と彫刻」-12月12日(日)午後6時まで。
*野上裕之彫刻展「鳥を放つ」ー12月21日(火)-1月16日(日)
:月曜・元旦・休廊。
*高臣大介ガラス個展ー2月1日(火)-6日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503