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テンポラリー通信

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2010年 12月 08日

師走の風景ー夢の系譜(12)

暗い顔をしてS君が来る。
牛乳パックの再生紙を利用した来年のカレンダーを持参した。
見事な出来上がりで、1300円で販売するという。
ここでも販売に協力して預かる事にした。
ぼそぼそと話している内に暗い表情の理由が分かる。
12月でお母さんの仕事が終わり、その分収入減となり悩んでいる。
30歳も過ぎて母親の収入を当てにするようでは、と励まし少し叱る。
先日も就活中のMさん、ハローワーク帰りのWさんが来た。
師走で、不景気と暗い話が多い。
ここは心のハローワークのようで、時々そんな人が集まる。

昨夕は岡部亮さんを囲み、K氏、Yくん、N氏、S氏が集り
宇田川洋さんの店に行く。
岡部さんの彫刻を続けていく事のこれまでの迷い、悩みを聞く。
展示をしてから心に燃え上がってきたものを大事にして欲しい。
食べていく事の困難さは、生活上のこととして、みんなが抱えている。
でも彼は第一番にやはり彫刻家なのだ。
中途半端で甘いと思える小さな作品を今週末まで
自宅に持って帰り仕上げると、語る。
展示が始り人前に晒すことで、彫刻家の魂に火が点いてきた。
時間は長さではない。集中である。
1年前に決めた個展の準備期間の長さより、こうして展示が始まって
からの短い時間の方が今彼は集中している。
会期中に展示が変わる事に批判的な向きもあるだろうが、
私はそれらすべてが、作家の時間と思っている。
その間作家の時を共有できれば、それが個展ではないか。
そう思うのである。
思ってもできない事もある。
それが何かの拍子に一気に開く。
シミー書房の豆本だけの展示でお茶を濁す事も想定していた
のかも知れない。
しかし彫刻の展示をお願いし、彼もそれを受けたのである。
心の底には彫刻への夢が渦巻いている。
その本当の気持ちが展示と共に溢れてきたのである。

生活という名の重りはいつも人に圧し掛かっている。
その時何が第一であるかを決めなければならない。
2,3番の事に振り回されてはならない。
第一を決めて、2,3があるのだ。
自分自身を振り返っても、一を決めずニ、三に従った為に、
後で周囲に迷惑をかけている。
そしてそれは最終的に自分に跳ね返ってくる。

Sくんも活字印刷と印鑑の店を第一に、徹して欲しい。
Mさんも画業を第一に将来を見据えて欲しい。
Wくんも文字表現を第一に、彼女との相克に打克って欲しい。
岡部亮さんも彫刻家として最後まで生きて欲しい。
その上で、それぞれがそれぞれであって、会いたい。
第二第三の事はその上での困難なのだ。
無器用でいいから、志す事を第一にして生き抜こう。

師走のお酒はほろ苦く、少し胃にもたれて帰り道軽く吐いたのだ。

*岡部亮展withシミー書房「詩の本と彫刻」-12月12日(日)まで。
 am11時-pm7時
*野上裕之彫刻展ー12月21日(火)-1月16日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2010-12-08 12:47 | Comments(0)


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