2010年 11月 24日
昨夕4時から及川恒平ライブ「まだあたたかい悲しみ」があった。 展示中の一原有徳3点組みステンレス鏡面作品の横に、唄う場が設定される。 吹き抜け上部に小型のスピーカーを置き、マイクテストを入念に繰り返す。 音が吹き抜け天井に反射し、自然な音が醸し出される。 会場空間を良く知る及川恒平の技である。 全国多くの場所でコンサートを開く及川さんが、ここでのライブを定点と位置付け、 自分の現在を見詰める機会と話している。 自らお客さんに出す軽食、飲み物も調達してきて、手作りコンサートのように 会場の空気を作っていく。 2005年3月前の場所で始った及川恒平ライブは、年に2,3回のペース で毎年続けられて来た。 以前とは違う現在の狭い空間でも変わらずこうして続くのは、場と聞き手の 関係を敏感に感受し、その事を及川さんが大切にしているからに違いない。 場とは歌い手にとって、聞き手としてそこに集る人間への友情の事と思える。 昨日も及川さんを私に最初に紹介した短歌評論の田中綾さん、 及川さんの最新CDに詩と歌を提供した詩人の糸田ともよさんが来ていた。 会場には他に宇田川洋さん、千鶴さん、歌人の山田航さんも見えいて、 今回初めての人も多くいる。 唄は静かな中にも緊張感を保って、流れるように2時間の時を刻む。 そして及川さんがこの場を定点コンサートと位置付ける理由が、少しだけ 私にも理解できた気がする。 ここでは聴衆におもねる必要が、限り無く少ないからである。 歌い手に聞き手の生き方を含めた顔が、同時代性として見えるからである。 その中で自分自身の来し方を振り返るように、今を確認していると思える。 聞き手に新旧の入れ替わり勿論もあるのだが、そこには今が無理なく 息づいていて、心の水位は自然と通ってくるものがある。 それは固定した定点ではなく、流動しつつ定点であるからなのだ。 及川さんの今が聞き手の今でもあるように、歌手と聴衆という舞台の境が 淡いのである。 フオークソング勃興期先頭にいた及川恒平が最盛期の商業主義の現場を去り、 10年の歳月を経て再び歌の世界に復帰した、歌への深い夢がそこにはある。 唄うとは何か、声とは何か。ソングを通して人は如何に人と繋がるのか。 商業主義的なヒットとはまた別の、声の求道者として人との間を開く夢の回路 を追求する及川恒平の生き方がある。 この人の声の質、声音には北の匂いが紛れもなくあって、その本質とは何かを ここ10数年唄の中で追求していた気が、私にはするのだ。 その試行錯誤の中で少しづつわたしたちの生き方がクロスし、場を創り出して きたと私は思っている。 建物の大きさ、広さ、立地の利便さ、聴衆の多少に関わらず、この場が 定点としてあるとすれば、それは私たちの生き方そのものが顕れる場の 確認とも思えるである。 きっとそれは一本の樹木の梢や根と同じように、それぞれが生きる深さと高さを 求めて顕われた群れる事のない場、他の樹木と共に繁る森を定点と呼んで いるからに違いないと思えるのだ。 *一原有徳追悼展ー11月26日(金)まで。am11時ーpm7時。 *岡部亮展withシミー書房「詩の本と彫刻」-11月30日(火)-12月12日(日) *野上裕之彫刻展ー12月21日(火)-1月16日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503で
by kakiten
| 2010-11-24 15:33
|
Comments(2)
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パートとはいえ、仕事優先!
うかがえなくて残念でした。
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kyoさま>しばらくお会いしていませんね。今回は特別にご案内も
出さず、ブログ上での告知にとどまりました。 でも心の入った淡々とした中にも、染み入るいいコンサートでしたよ、 お重箱の蓋洗った後忘れていました。 失礼しました。またお立ちお寄り下さい。 |
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