朝、南円山の方は日が射していた。
もう乗る機会も少なくなるなあと思い、自転車に乗る。
途中から空が暗くなり、雨。
路上に濡れた落葉が、黄、緑、赤と美しく散乱。
エルムの森の小道には人影もなく、
背後には葉の落ちた樹の幹が茶色に暗く沈んでいる。
乱調に美あり。そんな感じがした。
体は雨に打たれて冷えたが、目は季節の終わりに立会い、
秋冬の界(さかい)の保つ世界の束の間の美しさに触れていた。
画廊に着きすぐ熱い珈琲を淹れる。
苦味のある液体が体に周り、息が出る。
この自家焙煎の豆を届けてくれるM氏の紹介で、
熊野出身のA氏が先日来た。
不動の滝の位置を教えてくれという。
その数日後滝と不動明王を見て感動し、
小1時間近くもひとりそこにいたと報告に来る。
そのA氏がお礼といって熊野で出来た備長炭を置いていった。
普通の市販の物とは違う本物だという。
拍子木のようにして、二本で打ち合わせると固く澄んだ音がする。
空気を清浄にしてくれる効能があるというので、タバコを吸う奥の談話室に
あちこち置くことにした。
幼少年期を熊野で過ごしたA氏には、札幌の街と自然が歴史の
浅さとして不満があったようだ。
しかし私が示唆した浮動の滝の自然と街の近接した空間には、
何か故郷熊野にないオ-ラを感じたと思える。
それから何度かふらりと現われ、話し込んでいくようになった。
当初は職業が不動産屋と聞いて、私の中で拒否反応があったが、
本人は至って真摯な不動産屋で、こんな不動産の人もいるのかと
感心する。
不動産の仕事を選んだのも、遠い熊野の土の記憶が働いている。
土を見たい、土地を見たい。そんな本当の不動産屋業なのかもしれない。
この人の故郷の備長炭に寄せる深い造詣に、その事を感じたのである。
珈琲豆をひたすら焙煎する職人肌のM氏の流れが、この土地の土に
拘る不動産業の人を招き寄せたと思う。
人は人を呼ぶのだ。
今朝も心なしか空気の澄んだような備長炭の散らばる部屋で
そんなことを思っていた。
*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月14日(日)まで。
am11時ーpm7時。
*一原有徳追悼展ー11月17日(水)-26日(金)
*岡部亮展ー11月30日(火)-12月12日(日)
*及川恒平ライブ「まだあたたかい悲しみ」-11月23日(祝)午後4時~
予約2500円・当日3000円。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503