2010年 11月 10日
美術評論家の加藤玖仁子さんが来て、3本のチューリップを頂く。 一本は佐佐木方斎に、一本は花田和治さんに、 そしてもう一本は私にと、いう事だった。 2006年当時ベッドに寝たきりの方斎さんの家まで案内してくれたのは 美術家の花田和治さんだった。 そしてこの年の夏に佐佐木方斎展「格子群」の展示と、美術ノート他の 方斎の’80年代の全仕事を俯瞰するように展示した。 この時この展覧会を一番喜んでくれたひとりが、加藤玖仁子さんである。 それから佐佐木、花田、私の3人は加藤さんの中ではいつもセットされて いるようで、なにかと個々の活動を応援してくれるのであった。 3人とも頑張るのよ、と声に出さない心の配慮をいつも感じるのである。 今回の3本のチューリップにも、そんな思いが感じられた。 4年前はベッドに臥し勝ちだった佐佐木方斎が今は元気になり、3年前 は私が一時倒れ、今は花田さんが家に篭もっている。 3人3様の生活状況の変化があるが、加藤さんはいつも3人を暖かく励まし、 勇気づけてくれるのだ。 なかがわ・つかさと同時代を生きたこの優れた女性は、今回の佐佐木さんの 個展を心から喜び、同時に札幌芸術の森美術館でのなかがわ・つかさを軸 とする展覧会にも深い関心を寄せている。 佐佐木さんの名前も美術館の展覧会に出ていたわよと、嬉しそうに語る。 顔も似ているようねと、笑っていた。 そういえば、髭面のところが似ているかも知れないと思う。 鮮やかな花のような空気を残して加藤さんが帰った後、旭川彫刻美術館の Tさんが来る。Tさんは4年前ここの佐佐木方斎展を見たのが、最初の出会い で、それ以来佐佐木展は欠かさず見てくれている。 そして’80年代から方斎の友人でもあるYさんが来て、新旧の佐佐木フアン で話は盛り上がった。 少し荒れた暗い天気の一日だったが、3人のチューリップのような女性たち の訪問で、会場には明るい光が溢れていた。 ドイツへ帰国した谷口顕一郎さんが、帰国後のブログをまとめて書いている。 その中に懐かしい名前が出ていた。 スペインの美術家アンパロさんの名前である。 前のスペースで個展をし、作品を寄贈してくれた作家である。 個展が終わり帰国前の一日、ささやかな送別の宴をした事がある。 ムラギシがギター演奏をし、ニューヨーク在住のNさん、写真家のM夫人、 ケンとアヤの少人数のメンバーだった。 この時のムラギシの演奏は抜群の出来で、これ以降ソロを中心に演奏する 事を強く薦めたのである。 その事は彼の遺された日記にも書かれていて、この時の小さなコンサート が、彼の演奏家としての以後の分岐点になったと思える。 そんな懐かしい思い出の残るアンパロさんが、やはり忘れられないさっぽろ として懐かしそうにこの時出会った色々な人の名を思い出していたとケンの 日記は記している。 縦糸のように生きて過ぎてゆく時間があり、 そこに関わった他者の記憶が横糸のように織り込まれている。 その織リ篭められた時間は、時にこうして本当の布のように手にとって 触れることが出来るような気がする。 それは記憶という名の美しい時間の布地である。 この記憶の布地の事を、人は時に芸術と呼ぶのかも知れない。 過ぎ去る時間を結晶する結び目、鉱石のような時が織り込まれて。 佐佐木方斎展もあと残り僅かとなる。 今回如何なる時の織物が編まれたのか、 時間はきっとゆっくりと保水し、過ぎてゆく。 *佐佐木方斎展「逆絵画」-11月14日(日)まで。 am11時ーpm7時。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-11-10 12:23
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