札幌芸術の森美術館で今展示中の「さっぽろ・昭和30年代」展のカタログを
美術館のY氏が来て、寄贈してくれる。
美術評論家なかがわ・つかさを軸に昭和30年代という時代を振り返る
展覧会である。
なかがわ・つかさという名前は、佐佐木方斎さんから時々聞く事があった。
佐佐木さんが「美術ノート」を語る時に、なががわ・つかさの月刊誌「美術
北海道」の存在を先駆者としてあげるからだ。
この批評という受け手の側の歴史を、公的な美術館が企画として取り上げ
見直し位置付けようとする姿勢は、ある正統な時代意識と思える。
公募展主体の美術組織的観点からではなく、作家主体の個的批評軸を
立ち上げようと奮闘したなかがわ・つかさの仕事を、今時代として振り返る
事は美術館自体の成熟をも感じさせるものと思う。
私自身は、なかがわ・つかさという人物・その業績についてはほとんど
未知であったが、今回この展覧会を通してある異邦人が昭和28年に不意に
来道し札幌に住み着いてひとつの渦を巻き起こし、僅か10年でこの世を
去って行った熱い軌跡を初めて知る事となった。
この虹のようななかがわ・つかさの軌跡の後に、’80年代佐佐木方斎の「美術
ノート」が続くと私には見えるのである。
今度のカタログではそこまで位置付ける作業は進んではいない。
しかしながら、美術の時代状況を受け手の側からの投球として捉え直す視座
を提示した事において、この展覧会は画期的な企画と評価できるのである。
偶然の出来事だが、同時期にこのふたりの展覧会が催され、佐佐木方斎の
’70年代、’80年代が作家としては仕事は勿論の事だが、同時に彼の
「美術ノート」全10巻の仕事が、なかがわ・つかさの正統な批評軸の系譜として
現在に繋がる事を私は直感しているのだ。
*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)am11時ーpm7時。
月曜定休・休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503