’81年生れのYくんが来て、佐佐木方斎の説明を聞きながら熱心に
作品を見ていく。
以前にも「格子群」「余剰群」「自由群」の3部作を見て吃驚していたが、
今回は「逆絵画」新作と同時に、上記3部作もじっくり本人の説明を聞き
ながら鑑賞していった。
さらに「美術ノート」全巻にも目を通して、感嘆する事しきりである。
Yくんが生まれた頃の佐佐木方斎の活動・作品が、今彼の心を深く
捉えている。
Yくんの作品の保つ鉱石のような色彩の純粋結晶は、形こそ違え、
方斎さんの作品と通底する何かがある。
世代の違うふたりが、作品集を覗き込むようにして話し込む姿は
微笑ましく、好いものだった。
絶対に佐佐木さんの作品をYくんが見たら感動するわよと、言ったのは
彼の大学の先輩である小林麻美さんだった。
その通りの光景が今顕われていた。
Yくんだけでなく、’80年代以降に生まれた人たちの多くが佐佐木方斎の
仕事に関心を持った光景を、私は何度も見てきた。
特に作家として、Yくんはその方向性が佐佐木作品と交差するものが
あるのだ。
さらに佐佐木方斎編集の「美術ノート」に顕現する’80年代の文化状況の
熱さが、’80年代に生を受けた人間には、たまらなく興味をそそるらしい。
知らない時代に、こんなにも現在を感じさせる同じ要素が蠢いている。
僅か2,30年前の時代状況がこんなにも新鮮に見え、かつ目の前の
作品群が少しも古びていない。いやむしろ今の自分の仕事の目の前に、
それらがきらきらとある。
Yくんの静かな興奮は、止まることがなかった。
昨日ブログに記した亀井文夫の映画について、ニューヨークの中岡りえ
さんが、素早く反応し、ミクシイに載せている。
彼女が知っている映像が、亀井文夫と一致したからである。
ヒロシマ・死の灰の記録映像がそれである。
時間・場所を跳び越えるこの共感・感動のハイタッチは、文化作品の保つ
不思議な跳躍力と思う。
風雨の強い荒れた祝日の昨日。人影も疎らな一日だったが、時間は濃く
流れて寒さを感じさせない日だった。
閉廊時間近く、午後に一度会場に来たK氏から電話が入り
居酒屋ゆかりで飲もう伝言ある。
私は他に用があったので失礼したが、佐佐木方斎さんはひとりで
向かう。うきうきと飲みたそうな顔をしている。
場所を詳しく教えたが、道に疎いようなので心配になり、迎えに来たMさん
の車でちらっと居酒屋に寄り覗いたら、ニコニコ顔の佐佐木さんがいた。
すぐに分かったよとご機嫌で答える。
K氏、マスターの宇田川洋さん、ママの千鶴さんときっといい時間を
過ごした事だろう。
*佐佐木方斎展「逆絵画」-11月2日(火)-14日(日)am11時ー-m7時。
月曜定休・休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503