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テンポラリー通信

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2010年 10月 24日

吉増剛造の本ー秋のフーガ(19)

詩人の吉増剛造さんの新しい本「木浦通信」が送られてくる。
580頁を超える分厚い一冊である。
6ポという小さな活字でぎっしりと詰まっている。
表紙・扉・グラビアには今年6月亡くなられた大野一雄の”手の舞い”が
墨で跡となり踊っている。
注目すべきは、本の半分以上を占める、吉増剛造自身の「裸のメモ」
ー1939~2010の記録である。
誕生に始まり現在までの詳細な年譜であるが、その構成が半端ではない。
吉増さん自身の生を縦糸として、月日単位で綴られそこに関わった人の
文が入り、自らの折々の詩・文・対話が横糸のように織り込まれている。
さらに重要な一節は10ポの活字で浮き上がるように構成されている。
これはもう年譜というより一遍の詩、自らが手織りした一枚の古織物の
ようだ。
これは吉増さんの死に装束・経帷子ではないのか。
出版された矢立出版の矢立さんのご苦労も並大抵のものではないと、
想像する。
本の校正中に大野一雄さんが104歳で亡くなられ、図らずもこの本は
大野先生の最後の手の舞踏をこの世に遺す本ともなった。
寝たきりの生前の大野一雄が、掌に墨を塗りその手の動きを紙に印した
最後の舞踏の痕跡である。
その事実も含めてこの本は、どこか吉増剛造の死の準備にも思えて
くる。縁起でもないとご本人に怒られそうな気もするが、私にはそんな
気がしてならないのである。
とはいえ、この400頁余りに及ぶ詳細にして精緻な年譜「裸のメモ」は、
吉増剛造の生涯を賭けた織物・詩篇のようにあるのだ。

昆テンポラリー展も今日で最終日。
日曜日の所為もあり、朝から家族連れの車で来る人が多い。
6人それぞれの交友関係が如実で、普段のテリトリーが見える。
この展覧会もまた、人の交友関係が織り成す時間の織物である。
最後にいかなる帷子となって、心に残るか。
今日一日がラスト・ラン。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月24日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
  文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)。
 :企画原案・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館活動センター・テンポラリースペース。

 テンポラリースペー札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-10-24 13:35 | Comments(0)


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