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テンポラリー通信

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2010年 10月 15日

風冷たくー秋のフーガ(10)

晴れのち曇り。そして今日も風は冷たい。
18日札幌を離れる谷口さんが、自宅にある自転車を貸してくれるという。
ドイツに帰れば、物置において在るだけだから、使ってもいいよという。
人の物を借りるのは多少窮屈だが、ありがたくしばらくお借りする事にした。
あと2ヵ月もすれば雪である。
来年雪解けまでに新しい自転車をゆっくり探そう、そう思った。
サドルの位置を変えるパイプが曲がっていたので、修理に出す。
乗り易い位置に直ってから、乗るのが楽しみである。

次回展示予定の佐佐木方斎さんがフライヤーを持って来る。
展示作品は、F百号が4点と他に小品という。
すべて新作で、新作は10年ぶりかも知れない。
2006年に現在地に移転してから、毎年彼の個展を継続してきたが、
これまでは旧作と未発表の作品が主である。
今回は純粋な新作で、彼の復調ぶりが窺える。
1980年代を突っ走ってきた俊英の復活は嬉しい限りである。
前回谷口顕一郎展にもオープニングに最後までいてくれ、
そこで会った山本雄基さんの個展にもその後出かけたと聞く。
自宅に寝たきりのような4年前とは大きな違いがある。
作家はやはり作品を創る事で、気力を回復し元気になる。
ここまできたら、もう最後まで美術家として生き、美術家で死ねと、
発破をかけたのが効いたのかもしれない。
会場にいた山田航さん、酒井博史さん、ちょうど来た森本めぐみさん
の後輩のふたり教育大2年生と、明るく会話する佐佐木さんがいて、
これらの人たちが産まれた時代に活躍した佐佐木芳斉が、少しだけ
その輝きを取り戻しつつあるかに思えた。
作品を創る事で、その現在感覚が今を活き活きとさせる。
contemporaryの<con>とは、その意味である。
<ともに>の今なのだ。
産まれた年代で基底体制還元主義のような、与件に還元して
生きてはいけない。
誰もが、産まれる年を選んで産まれた訳でない。
それは与えられた与件というものである。
そこを前提としてから意思的生き方が始る。
そしてその意思的生き方の過程で人は人に出会うのだ。
佐佐木方斎の明るい表情を見ていて、そんな事を思っていた。
彼の展示には、この若い人たちがきっと見に来て新たな佐佐木世界
を共有し、何かを語る事だろう。
ムラギシが急死した夏は、最初の佐佐木方斎展だったが、この時
彼の作品・資料を貪るように見ていたのは、正しくこうした世代の若者
たちだったのだ。
作品に世代差はない。
あるのは、同時代の熱である。
その事を作品が証明するのである。

*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材にして」-10月12日(火)-24日(日)
 am11時ーpm7時。月曜定休。
 :谷口顕一郎・森本めぐみ(美術)・河田雅文(会場構成・映像)・山田航(短歌)
  ・文月悠光(現代詩)。
 :素材提供・木野田君公「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)
 :企画・熊谷直樹。
 :企画協力・札幌市博物館活動センター・テンポラリースペース。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
 

by kakiten | 2010-10-15 11:49 | Comments(0)


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