ライブ翌日は定休日だったが、谷口さんの希望もあり開ける。
再来週から始る「昆テンポラリー展」に出品する絵画を描くという。
午後歯医者さんに出かけた後会場に戻り、昨夜の熱いライブの話を
ふたりでした。まだまだ余韻が残っていた。
狭い会場に6人の楽器を持った勇士が燃えた。
そしてれを囲む聴衆の、特に目立った熊谷直樹氏の掛け声、合いの手。
この絶妙な間合いに、演奏者も聞き手もさらに乗ったのだ。
♪いいんで、ないか~い!
この掛け声は、タイミングと勢いがないと、ただの野次のように
野暮な声となる。
さらに音楽を良く聞く耳、そしてなによりも演奏と演奏者に対する
深い愛がないと駄目である。
この見事な声を発した熊谷氏が、実は当日サックスを演奏した
中西弘行氏ともどもムラギシと同じK高校の出身と後で知った。
これも不思議な縁である。
そんな後日談を谷口さんと話していると、ドラム奏者でライブの構成、
メンバー編成すべてを企画した有山睦さんがふらりと来る。
昨夜は機材の片づけ、車と飲めなくてゆっくり話も出来なかったので、
寄ってみたら電気が点いていたので嬉しくて寄ったという。
それから有山さん持参のビールを飲み、しばし昨夜の話が続いた。
演奏中も興奮し、涙が出そうになり、終ってから声も出なかったという。
今日はゆっくり谷口さんの作品を見て、本人の話を聞きたかった。
そう語る彼の表情には、この日の為に新たなバンドを結成し、
難曲の数々を見事にこなした熱い満足感と余韻が漂っていた。
普段定休日と知りながら、もしやと遠くここまで足を伸ばして来た心に、
彼の冷めやらぬ昨夜の熱気が続いているのを感じた。
紡ぐ言葉はもうその余韻の、言の葉でしかない。
百の理論、評論よりも互いの仕事の質が、最大の批評である。
音楽家は演奏で響き伝え、美術家は造型作品でその震えを見せる。
だからこのふたりにもう言葉は要らない。
会場の作品の間をグラス片手に歩きながら、立ち止り同じ方向を見て
語り合うふたりの後姿の肩に、小さな酔いどれ天使が飛んでいた。
日曜日のライブの後の月曜日。
いい余韻がまだ濃く漂って、日が暮れた。
*谷口顕一郎展「凹みスタデイ#19」-9月21日(火)ー10月3日(日)
am11時ーpn7時。
*昆テンポラリー展「札幌の昆虫を素材に」-10月12日(火)-24日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503