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2010年 09月 19日

白/黄/黒ー谷口顕一郎展(2)

床板が黒に近い茶色となったことには、賛否が分かれた。
前の木肌のままの方が良いという、当初から渋さを増してきた木目を
支持する人もいたが、今回はこの黒に近い床色が、くっきりと谷口作品
を引き立たせている事は間違いない。
壁や路上の傷痕・凹みをトレースし、黄色のプラステイックに移し、
それを素材に形容の美を自在に変幻させ再生する谷口作品は、
立体彫刻として宙に浮かせ展示されるのだが、この黄色素材に対し
床の濃い焦茶色は、作品をより軽やかに見せているのである。
壁の白、作品の黄、床の焦茶。
この色のバランスを見ていて、思った事は札幌の北の春の色彩である。
腐れ雪の間から、春一番を告げる黄・福寿草。
そして残雪の内に見える黒い土。
さらにまだ遠くの山に光る白・雪。
この早春の3色の色調が、巧まずして今回の谷口展に合致した気がする。
谷口顕一郎が採取する凹みは、路上や壁といういわば見捨てられたような
日常の汚れの内にある。
ピカピカの新しい壁面、舗装された路面には傷痕・凹みは存在しない。
何らかの理由によりズレ、傷つき、凹んだものの形が、彼の心を捉える。
雪が溶け始め、地の土が顔を出し腐れ雪となる早春の大地の色は
正しくこの路上や傷んだ壁面の黒ずんだ色調に通じる。
そこに大地の再生の象徴のように、小さな命・joyのように福寿草の黄
が咲き出す。
谷口の作品が保つ形象の美の再生、その日常に潜む傷痕・作品化への
眼線にはきっとこの北の春の色彩が無意識の内に深く根付いている
ような気がするのである。
今回初めて床の焦茶色の中に浮かぶ彼の作品を見ながら、
この偶然がいかに必然的な色調の合致であったかは、作家自身が
なによりも感心して眺めていた事実として印象的である。
従来は白い壁に作品をダイレクトに飾り、さらにここ1,2年は
天井から宙に浮かべ吊るして立体的に展示する方法を見せているが、
床の色壁の色にはそれほど自覚的であった訳ではない。
しかし今回経験しつつある事は、この空間の吹き抜け構造にもあって
2階から中央に吊られた作品見下ろす時、正に床面の色彩を背後に
して黄色の凹みの造型が浮き上がって見える事である。
これはあの地から咲き出す福寿草の黄の色彩の純粋形象ではないか。

今回の展示は、こうした発見も重ねながらこれまでの作品の系譜が
ひとつの凝縮を見せて、空間全体を構築してゆく予感に満ちている。


*谷口顕一郎展「凹みスタデイ♯19」ー9月21日(火)-10月3日(日)
 am11時-pm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-09-19 12:29 | Comments(0)


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