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2010年 08月 21日

空に井戸を掘るーハルニレの羽(7)

8年前の6月陶芸家の鯉江良二さんが創ったモニュメント「空に井戸を掘る」
を久し振りに先日の望来行きで見た。
望来の交流センター「みなくる」前広場に立つ、アルミ缶200キロを溶かし、
地面に彫った溝に流し込みその場で作成した作品である。
高さ約10メートル。
作品には作成時の参加メンバー全員の名前もローマ字で刻印されている。
アルミの地肌も8年の風雨に曝され鈍い光となり、周囲の電柱や遠くの
風力発電の銀色の塔と溶け合って、風景の一部のように馴染んで見える。
自分の名前の部分に懐かしく触れながら、もう少し海側に在った方が
この作品はより存在感を増したような気がしていた。
沖縄の島にも同じ物が立てられているというから、ここももっと海に近く
設置した方がよかったなあと、あらためて思うのだ。
鯉江さんは、「土に還る」という作品で美術界に注目されデビューし、
札幌では界川の源流域の土を素材に「川に還る」を制作した。
この石狩望来の作品を私は密かに「海に還る」と名付けていたが、
こうして久し振りに見ていると、まだ海には還っていないと思った。
「空に井戸を掘る」というタイトルの通り、海はまだ姿を現してはいない。
愛知県常滑出身の世界的陶芸家である鯉江良二さんの、石狩の海での
仕事はまだ未完のままであるという思いを強くした。
井戸を掘ったら次は水である。
常滑の海辺で生まれた鯉江良二の<海>への回帰を、いつか実現させたい
そんな思いで、久し振りの鯉江さんの仕事を見ていた。
思えば、この石狩・望来の地で大野一雄先生を初め吉増剛造、ロジャー
アックリング、阿部守と多くの優れた作家たちがいい仕事をした。
世界的にも通用する第一級の作家たちである。
そうした場所なのだ、この望来という土地は。
札幌を流れる無名の暗渠の川を通して有機的に繋がる石狩の海は、
歩行の道程によって我々の身体もまた山から海へ有機的な体験を経験する。
2日前の小さな旅、みちゆきもまたその一端である。
同行した若き詩人、歌人、写真家、華道人たちは、何を感受しただろうか。
百のレクチャーより、百の歩行の方がどんなに雄弁であるか、
今回もそんなそれぞれの思考・歩行の道行きだった気がする。


*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリスペースー札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2010-08-21 12:13 | Comments(0)


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