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テンポラリー通信

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2010年 08月 10日

3週目にー森の記憶(29)

唐牛幸史展も3週目に入る。
2週目最後の日曜日、藤倉翼さん、久野志乃さん、泉さんほかが集り、
会場でお酒を飲む。
その前に東京在住で北大出身のAくん夫妻が、2度目の来廊で
「札幌・緑の運河エルムゾーンを守る会」の署名簿をコピーし
東京でも署名を集めると意気込んでくれる。
奥さまは京都の出身で、3歳の女の子を抱きながら、当然よと
旦那ともども頼もしい。
夕刻から外の縁台に涼みながらたむろし、暗くなってからは
会場の床に寝そべり話し込む。
灯りを落とし、床から立ち上がる廃材の柱の周りに集り、見上げる。
唐牛さんと藤倉さんは女性論に熱が入る。
唐牛さんは、別れた奥さんとの記憶が甦ったのか熱い口調である。
会場の作品群が、こんなどうしようもない話を柔らかく包んで、
普段話せないことを引き出して、心の膿を吸い取ってくれるようだ。
女性たちは思い当たる事を頷きながら、相槌と同意の声を出す。
私は途中から奥で少し眠る。
男たちの恨み言に付き合ってもいられない。

日常にアートを、とかいうイヴェントもよくある話だが、
日常にアートというのは正確ではない。
アートが日常を創り出すのだ。
さらにいえば、ファインアートのファインな部分が、
非日常を日常化するのだ。
一見ぐたぐたと恨み事を思い出し語っているようだが、
普段は多分心の奥深く仕舞い込まれたトラウマの話である。
その用心深く閉ざされたトラウマの扉が開いているのだ。
お酒だけの所為ではない。
作品空間がそうさせてもいる。
そうでなければ、この日初めて出会った異性ふたりの前で
こんな話は出来ないのが普通である。
普段秘められた心が開いて膿を出している。
これが非日常の日常化というものである。
大酒を飲んだわけでもない。気持ちが緩やかに流れていた時間である。
午後10時にはお開きとなって、藤倉さんは迎えに来た彼女の車で
帰った。
唐牛さんはさらにここでひと眠りして車で帰ると残る。
私は自転車で夜道を走った。

作品に囲まれた空間でゆるりと横になり酒を飲み、話し込むのは
至福の時間である。
その時間は日常ではなく、非日常に属するファインな時間である。
これは決して日常にアートをなどという洒落た時間ではないのだ。
作品が創り得るファインな非日常である。
第二週目の最後の日、いい時間が流れた。
私も含めてもてず、冴えない男たちの愚痴に付き合ってくれた
久野さん、泉さんありがとう。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-8月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)ー10月3日(日)
*昆テンポラリー展ー10月12日(火)-24日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-9斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-10 11:23 | Comments(2)
Commented by ksakauchi at 2010-08-12 07:59 x
先日はありがとうございました。
素晴らしい空間と作品、そして楽しいお話とおいしい珈琲で楽しく過ごすことができました。

何より「エルムゾーン」という言葉の強さに魅了されました。
もし、ネットでの署名活動をお考えでしたら、協力させてください。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by テンポラリー at 2010-08-12 16:29 x
ksakauchiさま>こちらこそ、よろしくお願い致します。
またお会いしましょう。


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