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テンポラリー通信

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2010年 08月 07日

草伸びるー森の記憶(27)

2階南側回廊に植えたえん麦と牧草の種子が芽を吹き、
もう大分草丈を伸ばしてきている。
黒土に緑の草が西側の光の窓口に向かって伸びている様子は、
健気である。
その草土と共に置かれた土の赤子の塑像と下から立ち上がる柱の上に
置かれた赤子像は、最も唐牛幸史の世界が顕われている空間である。
一方1階は、正面1・8m×1・5mの大きな鏡面マットの藤倉翼写真作品
2点が空間に大きな比重を占めており、迫力がある。
モニター画面の横谷惠ニさんの全方向映像とともに、1階は
旧山下邸の記録が前面に出ている。
昨日は夕方までここの会場記録を、横谷さん、藤倉さんが撮影していた。
藤倉さんは毎回この会場に来るのが、嬉しそうである。
唐牛さんの構成力と自分の出来得る最大限の写真の合体。
このふたつが重なって、毎回新たな発見があるからである。
自分の写真であって、もう自分の写真ではない。
サッカーボールに例えれば、ボールはすでにキックされ放たれている。
そのボールが来る度に新たな方向から自らにパスされてくる。
そんな感じを抱いている。
作家によっては愛しい自分の作品を抱きしめ続け、チェックに余念のない
タイプもいるようだが、これはExhibitionというより、Inhibitionに近い。
ExがInに変わるだけだが、意味は正反対である。
封印・封鎖・タブーのInとなる。
作品がボールのように解き放たれる事はない。
旧山下邸の持ち主を悼み、死者の祥月命日からお盆まで続くこの展覧会
をある意味象徴するのは、この2階に設定された黒土と草のインスタレーシ
ヨンである。
種子を蒔くことから始まり、日々種子から草へと変化してゆく過程が
命への祈りと再生を意味していると思うからだ。
3人の作家による旧山下邸映像記録を再構成し、会場全体として
ひとつの空間を構築した唐牛幸史の力業は、凡百のグループ展とは違い、
きちっとした主題性を保っている。
つまりは、<×1>が明白なのである。
旧山下邸という現実に在った和洋折衷の民家とその持ち主を通して、
札幌という都市が保っていた近代の正統な民の系譜を、きちっとそこで
自らの生き方、来し方も含めて見て取る視軸が基底としてあるからである。
一点一点の作品にもたれかかる甘えがそこにはない。
藤倉翼の作品が、自由に空間にはばたき、作家自身が寛げるのは多分に
そうした共有する原則の存在があるからと思う。
こうしてこの空間は、それぞれのtemporaryが、主題というconを創出しつつ
ささやかだけれども、確かな<Conーtemporary>を表出しつつある。
あと一週間の猛暑の夏日。
来週からは帰省組、訪問組が東京、沖縄等からきらきらと訪れるだろう。

*唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(火)-9月12日(日)
*谷口顕一郎展ー9月21日(火)-10月3日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-08-07 12:20 | Comments(0)


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