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2010年 07月 28日
唐牛幸史展初日。 まず訪れてくれたのは、旧山下邸の方々だった。 この家で育ち、この家に嫁いで来たご夫婦である。 昨年の今日、おばあ様が亡くなり、ちょうど一年。 80年近く在ったこの家も処分の対象に今なっている。 一軒の家が無くなる。 それ自体は日常よくある出来事である。 しかしこの家で過ごした家族の固有の記憶は、決してよくある話一般 ではない。 今回の唐牛幸史展「REPUBLIC」のテーマは、この家の記憶である。 しかしその記憶は懐旧の念で構成されたものではない。 唐牛さん自身の固有の記憶がその根幹に据えられ、赤子の塑像が その象徴ともなっている。 入って右の一角に、石を積み重ねその上に赤子の塑像がある。 その表面には白い雪のような粉が降り注がれ、北の雪の大地から 再生する命そのもののように表現されている。 また一階正面には、廃屋の古材を重ねて柱とし吹き抜けを突き抜ける 4mを超える立柱がある。 その2階天井に近い部分には、同じような赤子の塑像が置かれている。 2階南部分の回廊には土が盛られ種子が蒔かれ、会期中に緑の葉が 開くという。 そしてそこにも左端に赤子の塑像が置かれている。 一軒の古民家の喪失と自らの赤子への思いが、生と死の界(さかい)を超え、 再生を願う祈りのようにして、この一、ニ階を貫く立柱があると思える。 最初に訪れた旧山下邸の遺族のおふたりは、ゆっくりと寛ぎ話しながら 最後に呟くように言った。 ”癒しの空間ですよね” 藤倉翼さんの撮影した旧山下邸の写真、竹本英樹さんの撮影した家の内外 、それらはみなこのおふたりのかって生活した家そのものである。 しかしおふたりがこの時呟いたこの言葉には、もう私たちの家という 私的な響きは無かった。 かって住んでいた記憶はこの作品展に立ち会う事で、もう私的範疇を離れ 別次元の純粋抽象として山下邸は存在し、ある種外の目線から寛いで いたのである。 それが、”癒しですよね”という言葉の内に漲っていたと思う。 この事でふっと思い出すことがあった。 最愛の息子を不意の事故で亡くされたムラギシのお母さまの事である。 追悼展と遺作集の仕事を3年共にした時、聞いた言葉である。 それは、<知らない息子を発見して毎日楽しいわ。>という言葉だった。 私的次元からより広い別の次元で、お母さまは個としての別の息子を 見ていたのである。 息子はもう私的息子ではない、純粋抽象としてある公的な存在にいた。 今回の旧山下邸の遺族の方々の一言は、この時ムラギシのお母さまの 言葉と同様の響きを保って私には聞こえていた。 唐牛さんが会場全体構成をし、3人の写真と映像によって再現された 旧山下邸は、かってここに長くお住いになられた人たちの記憶を 懐旧の閉じた世界から解き放ち、ある新たな次元へとその存在を 転位させていたのだ。 その事が、まさしく今回の主題でもある<REPUBLIC>そのものの具現 であったと、私には思える。 *唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月27日(火)-8月15日(日) am11時ーpm7時:月曜定休。 *西田卓司展「ワーキングフロー」-8月24日(日)-9月12日(日) *谷口顕一郎展ー9月21日(火)ー10月3日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-07-28 12:22
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Comments(2)
先日は案内のメールありがとうございました。伺えないのが残念です。
ここ数日のテンポラリー通信を読んでいると色々と活動が活発のようですね。体調には気をつけてくださいね。
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nishikawaさん>いつもお心遣い頂き、ありがとうございます。
はい、体調には気をつけます。 |
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