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2010年 07月 14日
あの日、川に迫り出すステージ設営の為に 一緒に汗を流した平川勝洋さんが来た。 当然あの日の大野一雄と慶人さんの話になる。 「カムチャッカ・みちゆき・大野一雄」が、隠された追悼展の主題だよと 話すと、展示してある当日のポスターの文章を指さし、もうこの時予見 していたじゃないかと言う。 カムチャッカは出ていないが、そう思えるのが不思議だった。 いづれが舟か いづれが川か 死生のからみあい 胎児は流れの中 母に 母は流れの中 胎児にしがみつく (「石狩の鼻曲がり」-大野一雄) ・・・・・・ 今回、川が海へと還って行く水の境界、鮭たちの死と誕生の入口、 大地が海に触れ、沈み、陽が落日となって赤く火柱となる所、 石狩河口来札で大野一雄石狩公演がおこなわれる。 ここは古くからアイヌの人たちが、若生(わッカオイ=水の湧き出る所) 、来札(らイサツ=乾いた死)と呼び、また近代明治には伊達藩が上陸 し、八幡と呼んだ所である。 この自然と歴史の天地で踊られる「石狩の鼻曲がり」は、あたかも 大野一雄自身の大いなる回帰行のようであり、またたった一人の 北の天地への道行きでもあるだろう。 そして今私たちは、ここに住む地霊たちとともに彼の魂の風景を 目撃し、深い鎮魂の涙を、ともに流すに違いない。 天と地が未だ分かれなかった 太古の姿の様、 死と生が一つの様な歩み (「魂の風景」-大野一雄) 平川さんが指摘したのは、この文中の<大いなる回帰行>という 部分である。 ここに既に、父祖の海への回帰が示唆されているというのだ。 そう言われればそんな気もするのだ。 この時点では、先生の<カムチャッカ・みちゆき>は明確ではないが、 公演前に書かれた私の文にはそんな予感がすでに漂っているのである。 青春時代、アルヘンチーナの舞踏に接し舞踏に憧れた大野一雄の志 を断ったのは、戦争の時代の父なる世代である。 その父なるものは戦後も絶えて浮上する事はなく、胸の奥に閉じた ままであった。 海に近い河口の、川面の上に迫り出した夕陽と風と波の舞台で、 身体に封印されていたこの<父なるもの>は、体の奥底から沁み出る ように大野一雄は、この6年後にカムチャッカ行きを語りだすのである。 父の踊りをしたい。ヒグマの踊りです。 カムチャッカのガイド本には、真っ赤な紅鮭の群れが河口に群がり、 さらにその鮭を口に咥(くわ)えている羆と、2葉の写真が載っている。 身体を賭けて働く父の姿が、この羆と重なるのである。 命の連鎖、命の源泉。 大野一雄が常々口にしていた世界である。 この時不幸な時代の圧制的な父像は消えて、父の姿を子として 再奪取し、再発見して大野一雄はあったのではないかと思う。 父が窓から見たヒグマというのは、猟師たちにとって内輪といいますか 人間同士と同じように親しい関係なのです。(大野一雄) 先生の中からヒグマが出てくるとは思わなかったなあ(笑い) 驚いたなあ。(吉増剛造) (帽子をとりだして)ヒグマを演ろうとして、これを私がつくったの。 ・・・・ なんとなくできてしまった。 (大野一雄) すごいなあ(笑) (吉増剛造) かりん舎刊「大野一雄 石狩の鼻曲がり」所収 この後大野一雄は倒れて車椅子の生活となり、このカムチャッカへの夢は ついに実現する事はなかった。 ただ現実はそうした経過を経たにもかかわらず、この時熱く嬉しそうに語った ヒグマの夢は、きっと死の間際まで、「思いは現実、現実は思い」として、 先生の心の中に活き活きと息づいていたに違いない。 その思いを共有でき得れば、<カムチャッカ・みちゆき・大野一雄>は 私が今出来得る最善の大野一雄追悼ともなるのである。 *追悼・大野一雄展ー7月18日(日)まで。am11時ーpm7時。 *唐牛幸史展「REPUBLIC」-7月20日~会場設営。 8月3日(火)ー15日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-07-14 12:53
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