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2010年 07月 11日
展示して、初めて実感する事もある。 これまでも何回か、大野一雄の展示は試みてきた。 時にそれが石狩がテーマだったり、大野一雄頌が主題だったりした。 しかし今回くっきりと見えてきたものは、<思いは現実、現実は思い> という大野先生の言葉に象徴される<思い>の共有、その<みちゆき> の意識だった。 あの時私はひとつの大きな仕事「界川游行」という暗渠の川を再生する 仕事を終え、さらにその先の石狩へという思いに囚われていた。 札幌を流れる川の海へと注ぐ処(ところ)、石狩の海へと心は向いていた。 そういう時に大野一雄と会ったのだ。 吉増剛造展のグストとして、「午後七時の会話」に来場され その会話と踊りに激しく触発されるものがあった。 私は日頃の思いをぶつけるように、大野先生に提案した。 ”先生、一緒に石狩へ行きましょう” 即座に返事が返ってきた。 ”行きましょう” 2月冬の石狩。強風の白い世界に風と踊る先生がいた。 雪が消え、さらなる場の設定の為もう一度来て頂く為の相談。 5月、初めて横浜のご自宅を訪問する。 まだ奥様もご健在で、貝柱の炊き込み御飯をご馳走になる。 7月、場所下見の為来札され、朝植物園から茨戸街道を経て石狩河口に 案内した。 植物園ではその森の風景にいたく感動され、こんな植物園は 世界中を見てもそう例のないものだと話される。 河口に行く前に、源泉のある場所から川が流れるように海へと案内を 意図したのだ。 石狩で私が考えていた場所は、旧船着場の跡地だったが、先生は一目 見るなり、もっと水と土の接する場所がいいと言う。 それではと、さらに河口に近い来札(ライサツ)という地名の場所まで 下った。 その場所を見るなり先生は、ご持参のデッサン帖を広げて我々に見せた のだ。 その描かれた風景こそ、まさにこの場所を初めから知っていたのかと 思えるほど、酷似したものであった。 その時の写真が今に残っている。 巨大な流木に寄りかかり、遠くを見詰めるように思いに耽っている姿である。 札幌の都市化された暗渠の川を辿り、再びその姿を顕した川の末。 母なる海に近く、遠い内奥の多くの源流の記憶をすべて包含して、小さな 湾のようなライサツの岸辺を、水は無心に叩いていた。 もうそこは海の影響が強く、表面の流れは上流へと波立っている。 陸と海の本当の界(さかい)。 美しい岸辺であった。 今もこの時の記憶は鮮明である。 私の石狩へという思いが、先生と共に遠く深く合致した時である。 原題「石狩の鼻曲がり」を、敢えて「石狩・みちゆき・大野一雄」と名付けた のもまったく私の個人的とも思える、そうした気持ちからである。 その事を大野一雄は、黙ってすべてを理解して許してくれた。 今回「追悼・大野一雄」を展示して初めて気付いたのは、 この<みちゆき>の意識が鮮明に感じられる事である。 今度は私が大野先生のカムチャッカについてゆく事だ。 石狩公演後初めて語られた先生の<父・祖父の地>カムチャッカ。 その地への思いに私は付いて行きたかった。 今回隠され顕在化した主題とは、「カムチャッカ・みちゆき・大野一雄」である。 この未完の大野一雄の思いに殉じる事が、今ここで私のでき得る最善の 大野一雄への追悼であると思える。 *追悼・大野一雄展ー7月9日(金)-18日(日)am11時ーpm7時 月曜定休・休廊。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-07-11 12:58
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