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テンポラリー通信

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2010年 05月 18日

近代の夢ー青き繁みに(16)

茫々たる原始林を切り開き、そこを白いキャンバスのようにして
描かれたものがある。
その場、その場所によって、その夢の形は違うだろうが、札幌の場合は、
多分洋への浪漫と言えるだろう。
その代表的な象徴が時計台である。
そして北一条円山ゾーンに点在した洋館、教会、北大敷地の軟石建築、木造
建築、牧舎。さらに道庁赤レンガ、清華亭、植物園内の建物等々。
1881年の札幌市街図には、この多くの洋館が立ち並んでいる。
アメリカ・マサチューセッツさながらの街並みで、かのクラーク博士も故郷を
想い、懐かしがったと歴史は伝える。
民間の富豪が建てた個人の洋館、官が建築した洋風公共建築物が立ち並ぶ
街並みは、当時の日本の洋への憧憬に満ちていたと思える。
現在これらの多くは喪われ、その風景が保っていた夢の形を喪失してきた。
しかしその幾つかは、官ゆえの建築物として文化財として保存されてもいる。
風景は喪失してきたが、建物だけは何とか残っている。
この建物に風景を取り戻させる事こそが、現代の我々に負託された文化の
行為であると思う。
その行為こそが、<Reーpublic>な真に公共を取り戻す行為と思う。
昨日記した伊藤邸の問題は、この<Republic>な行為の問題である。
茫々たる原始林の記憶と近代の夢の形を、近代の浪漫としてその風景
として再生、Repubjicし得るかが問われるのだ。
現代は画一化という物のグローバリズムの渦中にある。
正統な近代の固有の夢の形をRepublicしなければならない。
真に現代であるとは、そうした真にラデイカルな近代を見つめる事では
ないのか。
今立ちはだかっている高層建築物の百年後を考えるがいい。
一本のハルニレの巨樹、一本のヤチダモの巨樹に匹敵する世界が
持続でき得るのか。
一棟の洋館、一棟の軟石建築に蓄積された百年に対抗でき得るか。
高層建築物の近未来風景には、茫々たる廃墟の姿しか見えてこない。
辛うじて現在まで存した近代本来の風景をこれ以上喪失してはならない。
The Republic of dreams。
United of dreams of America。
それが多分近代札幌本来の夢のかたち、その原風景なのだと思う。
その夢の原点を喪う事は、ただの侵略者の殺伐たるマネーゲームの風景
、侵略の荒野しか広がらない。

*「交差線」4人展ー5月18日(火)-23日(日)am11時ーpm7時。
*梅田マサノリ展「マニノ・アル・シツナイ」-5月25日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-05-18 13:12 | Comments(0)


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