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テンポラリー通信

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2010年 04月 29日

濃き紅(くれない)やー早春賦(21)

山の肌が赤みを増している。
南風強く、雨模様の朝。
歩いていて、ふと「都ぞ 弥生」の一節が浮かんだ。

 尽きせぬ奢(おご)りに濃き紅(くれない)や
 その春暮れては移ろう色の
 夢こそひと時青き繁みに
 燃えなん我胸想いを載せて

<濃き紅(くれない)>を連想していたのだ。
運河の全面保存に命をかけ、倒れて半身不随となり、不自由な右手に
絵筆を括り付け、真っ赤な運河を描いた小樽人がいたという。
この話を思い出すとき、いつも心に忸怩たる想いがこみあがる。
<赤><紅(くれない)><朱>。
「南半球舟行」を書いた早川禎治さんは、

 ここでは白は赤をへずして、いきなり青となる。
 それはすでにこの地が人間が介在すべきでない空間であること
 を意味しないか。

と、南極の氷海で<赤>の不在の意味を問うている。
<赤は>命の色なのだと思う。
今の時期、山笑うという。白と黒の世界から、梢が芽吹き赤味を増し、
モノクロームの世界が揺らぎだす。
命の赤が山に微笑みを与えているのだ。
濃き紅(くれない)とは、濃き命の事である。
再び遠くへと記憶が飛ぶ。
真っ赤なブレザーを着て、寂れた下宿を訪れた恋人の記憶だ。
あの鮮烈な赤を今も忘れない。
男が鎧のように着込んだ百のイデオロギーも理屈も、
<赤>には敵わない。
<赤を経ずして、いきなり青となる>。
若年の青臭い白い観念の世界にいたからだ。
<夢こそひと時青き繁みに>
今なら見えるものもある。

やはり季節はもう春なのだ。
沸々と湧き上がる何かがある。

*「交差線」-5月18日(火)-23日(日)
*阿部守展ー6月1日(火)-13日(日)
*西牧浩一展ー6月18日(金)-20日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-04-29 11:46 | Comments(0)


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