宙(そら)に鳥を植え、床にミミズの胴体を植える。
そして壁には、落花生を抓(つま)む指の素描が並んでいる。
「触れるー空・地・指」3人展。
誰が抜けてもこの空間のバランスは崩れることだろう。
石狩平野の内陸、空知地方との界(さかい)のような
岩見沢で暮らす3人の触れた天地である。
空を舞うトンビを見詰めていた秋元さなえ、地を這うミミズを見詰めていた太田
理美、落花生を抓む指先を見詰める森本めぐみ。
3人3様の屈託ない日常がここにはある。
江別、恵庭、札幌それぞれの出身地を出て、
空知と石狩の境で触れた日常の片々。その小さな回路に触れる世界。
空の鳥への視線、地を這うミミズへの視線、自分の指先への視線。
それらが個々である時は、ただバラバラに日常の周辺を彷徨っている。
しかしそれらが<触れる>として意識化される時、外界は固有の回路とも
なって個々の内面を映し出す。
3っの視線が束になって、不確かではあるがある身体性を保ってくる。
その身体性の内に3人の住む場処がぼんやりと姿を見せる、
江別でもない、恵庭でもない、札幌でもない場処。
世界はまだ触れる範囲で、内側の世界には充分に相渉っていない。
ただ3人がひとつの空間を共有した時、触れる世界は確実に広がってくる。
鬱屈して閉じる個の遮断機は、そのままに閉じる事がないからだ。
これから続く会期の時間の中で、3っの視線は交錯しつつ、
新たな何かに触れてゆく。
それが社会へ向かう契機となるのか、北の自然の内への目覚めとなるのか。
まだ始ったばかりの3っの感性の触覚が、遅い春の野のように萌え出ている。
*「触れるー空・地・指」展-秋元さなえ・太田理美・森本めぐみー
3月23日(火)-4月4日(日)am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*藤谷康晴展「ANALOG FLIGHT SAPPORO→」
4月13日(火)-25日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503