2010年 03月 13日
次回展示予定の3人が来る。 3人展のコンセプトは、<触れる>である。 3人3様の外界への渇望を、「触れるー空・地・指」とした。 秋元さん、太田さん、森本さんと教育大岩見沢校の3人。 先日紀伊国屋書店2階スペースで展示をしていた3人である。 このスペースの道路面は、大きくガラス窓で開いた空間だ。 しかし内側に装飾的な灯りが設置されていて、窓外に美しい梢を広げる樹 と、その背後に壁のように立ちはだかるビルとの絶妙の対比風景が殺がれ ている。街路樹とはいえ、2階の位置から見る一本の樹の立ち姿は伸び伸び と枝を視界前面に広げて、美しいものだ。 無機質な背後のビル壁を背にしたその有機的な樹の立ち姿は、普段決して 日常の道路からは見られるものではない。 2階という高さゆえの視界である。 紀伊国屋は、木之国から由来する名前の筈だが、ここ北の国の樹には 興味がないのか、物販の支店という出先意識の所為か、この樹の美しさ を見る視座を殺いで、展示空間を造っている。 装飾的な灯りを消し、作品に照明を活かし、外景を取り込んだ空間とすれば、 この展示スペースはもっと魅力的な空間になる。 同じ大学研究室の3人がここに展示しているのを先日見た時、 個々の作品に内在する蠢くような欲求が、外に、世界に触れたいと 切実な声を発している事に気付く。 しかしこの空間では、外に面した壁一面が透明なガラス壁であるにも 拘わらず、装飾的な室内灯の列が外界を遮断しているのだ。 さらに窓に沿って横長のスペースは、作品を陳列的な並列状態に 押しやり、個々の作品が内在する<渇き>をさらに平板的なもの にしていた。 商品陳列意識の延長で構成されたこの空間には、見えない監視・ 整理・分類の壁が張り巡らされている。 従って透明な外へ向かって開いているガラス壁も、実は遮断されている。 これでは、3人の渇きの声は見る者に一体となって届かない。 もっとぎゅっと凝縮して、声を聞きたい。 そう思っていた。 その思いが今回の3人展の主題として提案した「触れる」である。 続く「空・地・指」は3人の外界との触れ様を暗示している。 さらには、岩見沢の中の特殊空間。 大学の建っている地域から漂白されたような遊離空間で もがいているような若い感性を、<ソラチ・ユビ>とも暗兪するものだ。 石狩の内陸寄りのエッジ。空知と石狩の界(さかい)。 それが岩見沢の位置でもある。 その境界で蠢く3人の指は、外界に触れたくて蠢いている。 岩見沢の寂れた街にも、取りまく自然にも触れれず、渇いているのだ。 若い感性は内部で、切実に蠢(うごめ)いている。 それが3人に共通する欲求なのだ。 そこをより濃く顕在化させたい。 因みに紀伊国屋での3人展のタイトルは、「3年生・3人展」というものだ。 これでは何にも伝わらず、ただの事実の数字羅列である。 そんなものではない、岩見沢で生きる潜在的な蠢(うごめ)く感性がある。 呼びかけに応じて集った3人にそんな話をする。 最初は固かった3人の表情が解けて、趣旨を了解してくれる。 この日酒井博史さんの久方ぶりのライブが宍戸展会場であった。 感激した宍戸優香莉さんは、酒井さんの次のライブ予定を聞いている。 次は酒井さんの追っ駆けとなるようだ。 尾崎豊を愛する宍戸さんは、酒井さんの歌声に共通する叫びを感じたの かも知れない。 それはきっと都市を生きる人間の、ラデイカルな哀とでも言うべきか。 *宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月14日まで。 am11時ーpm7時 *「触れるー空・地・指」展ー3月23日(火)-4月4日(日) *藤谷康晴展「ANALOG FLIGHT-sapporo →」ー4月13日(火) -25日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-03-13 13:24
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