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テンポラリー通信

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2010年 03月 04日

国際芸術展ー夢界(ゆめさかい)(5)

背広姿の3人が、朝開廊と同時に姿を見せる。
市役所の文化部振興課の人たちだった。
札幌における国際芸術展開催のヒアリングという事だった。
広く意見をお伺いしてという事らしい。
こんな場末のギヤラリーにまで来て頂き恐縮です、とは
言わなかったが、それなりに応対する。
先ずは先手をとって、北大寮歌をご存知ですかと切り出した。
うろ覚えです、と少し戸惑いながら答える。

 都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂う宴遊の莚

と有名な出だしの歌詞を声に出す。
これ弥生というのは3月、今の事ですよね、今花の香なんか漂っていませんよ。
つまりは、ここでいう<都>とは多分東京・京都の事で、
そこから見た札幌でしょう。その上で

 人の世の 清き国ぞとあこがれぬ

と移住してきた者の視線です。
この他国からの移住者の視軸を今もまだ意識に構造として保ったまま
啓蒙的に札幌文化を考えていませんか。
そんな話をした。
官が民を指導し導いていく文化など、本物ではないに決まっている。
それから最近とみに多用される<アート>という言葉にも苦言を呈した。
上野だったか、カミヤバーというのがあって、そこでデンキブランというお酒が
売っている。このデンキという言葉が気になっていたが、これは文明開化の
時代<デンキ>が最新の意味で使われたから当時珍しい洋酒ブランデー
に付けられて<デンキブラン>となったと聞いた。
これと似た流行語が戦後の<ブンカ>で、ブンカ住宅、ブンカ鍋、ブンカ包丁
とか、新しいものには何でもブンカが付く。
それと似たような流行りが最近のアートで、何でもアートと付く傾向がある。
役所まで乗り出して、国際アート展とかご指導、ご鞭撻に及ぶ訳で
なにか明治以降の近代化路線、鹿鳴館風俗は形を変え今にも続いて
いるかの如くである。
芸術文化の振興という公的なパブリックワークとして、さらにはパブリック
アートとして率先して指導するという感覚には違和感を覚えていた。
まして札幌駅から大通り駅までの地下通路をアート広場とする発想にも
激しく異和感をもっている。
無機質な通路の眼の臭い消しとしか思えないからである。
この五感の臭い消しにアートが使われる。
これは本来の芸術とは異質なデザインの事ではないのか。
トイレをお化粧室という。雑音を消す為にBGMという音楽がある。
臭い臭いには、芳香剤が使用される。
味覚には添加物が付与される。
これらすべては五感の臭い消しとしてある。
それら全部を否定はしないが、それらが芸術であるとは断じて思わない。
1時間ほどそんな話をして最後に、田野崎文さんの名唱「この道」を
聞かせようと思い彼女のCDをかける。
高層市庁舎の目の前、足下に建つ時計台とその界隈を唄った
北原白秋、山田耕作の近代の名曲である。
この歌曲が札幌をイメージして創られた事を知らない人も多い。
毎日時計台の前を通勤する役所の方たちは、どう思うかと思ったのである。
さらにこの歌を歌手を志す札幌・石狩出身の若い女性が、東京の商業主義の
業界の渦中でくたくたに疲れ果て、自らの故郷・原点を確認するかのように
時計台に立ち、鐘の音と共にギター一本でこの歌曲を唄い録音している。
現在の時計台界隈が喪ってきた近代札幌の風景が、この歌曲にはある。
その今は喪われた筈のものが、彼女の失意を勇気づけ再生を促がすかの
ように、深く唄われるのだ。
この力が真の文化の力ではないのか。
そこを聞いて欲しかったのだ。
すると不思議な事が起きた。何度プレイにしても音が跳ぶのである。
「この道」がかからず、次の曲が流れる。
あれ、市役所の人には聞いて欲しくないのかしらと冗談言いながら、
何度もかけ直したが、結局時間切れとなる。
3人が帰った後、座った所に名刺入れが置き忘れて残っていた。
彼等も余程慌てていたのだろう。

 この道はいつか来た道
 ああ そうだよ
 あかしやの花が咲いている

 あの丘はいつか見た丘
 ああ そうだよ 
 ほら 白い時計台だよ

*宍戸優香莉展「むすんで ひらいて」-3月2日(火)-14日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-03-04 13:48 | Comments(2)
Commented by kyo at 2010-03-04 17:08 x
その後は、ちゃんとかかりましたか?(^^♪
Commented by kakiten at 2010-03-04 18:06
kyoさん>その後はちゃんとかかりましたよ。


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