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テンポラリー通信

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2010年 02月 12日

遠来の友ー有機的な世界(22)

”久し振り!”と声をかけ童顔の青年が来る。
京都在住の橘内光則さんだった。
通称”キッツ”。
大学時代の恩師山本勇一先生の退官記念画展に出席の為
有給休暇をとって、久し振りの札幌という。
今駅に到着して真っ直ぐここに来てくれた。
最近凝っているというどぶろくを4本と、神戸のバウムクーヘンを
お土産に頂いた。
この取り合わせがなんとも、キッツらしい。
しばし近況を語り合ううちに、藤谷康晴さんが来る。
4月個展を2年振りに申し込んでくれ、今までの資料を綴じたものを
持参。
ある意味では、このふたり対極の画風で、似たところは微細な対象物への
描写力である。
かってここで最初の個展をした時の藤谷さんは、4番街の建物を詳細な
リアリズムで描いていた。
橘内さんは、大学の友人たちを詳細な空気感の中に描いていた。
ともに写真かと思うようなスーパーリアリズムである。
しかしその後藤谷さんは、内面の殺意の情念のような抽象絵画に変わり、
ライブドローイングを主体とするようになる。
一方橘内さんは、爽やかで透明な学生時代の空気のまま、社会人となり
その方向性を大きく変える事無く、今も制作を勤めながら続けている。
都市への視座と友人達との囲繞空間とふたりの視座は対極にあるのだが、
その対象への克明な観察と詳細な仕上げ方には、手法としてある時期
似たものがあるのだ。
しかし親和力と殺意力とでもいうべきふたりの内面の視座は、対極にある。
ふたりの要望に応えて、大野一雄石狩河口公演ヴィデオを流す。
上映時間2時間近く、ほとんど身動ぎもせず見入るふたりがいた。
途中頂いたどぶろくが2本空く。それにバウムクーヘンを食べ、
お腹が少し異常である。
酔いが早く回る。空腹の所為もある。
最後のステージアンコールの舞台”エストレリータ”と”ラ・パロマ”が終り、
小さく拍手する藤谷さんがいた。
無機質な都市風景へのある種憎悪とテロリズムの作家藤谷さんが、
こうして大野先生の舞踏に感動してくれたのは、とても嬉しい事だ。
きっと2年振りの個展へのいい転機にも影響するかも知れない。
そんな気がした。
この石狩河口大野一雄舞踏映像は、都市に対し憎悪とテロの情念を
激しく燃やす藤谷さんに大きく影響を与えている。
言わば時代や社会に対し、肯定的で明の側に属する橘内さんより、
否定的で挑戦的な藤谷さんの方に、大野一雄の魂の舞踏は、より大きく
働きかけたようである。
国家権力が支配し、個人の夢を殺した時代を経た大野一雄の魂再生の
舞踏は、その国家社会への憎悪というより、その傷を深く秘め再生して
いく死から生への深い視座が根底に宿っている。
鮭の一生に託された生死の再生への賛歌は、大野先生の人生そのもの
でもあるのだ。
傷の深い分だけ、その再生への感動も深いのである。
藤谷さんが感動を多くもったとすれば、それは同時に彼の絶望の深さに
比例する深さである。
2年の空白を経て訪ねてくれた藤谷康晴さん。
同じくらいの期間を経て京都から真っ直ぐここを訪ねてくれた橘内さん。
ふたりの内面的立ち位置はそれぞれ違うけれども、ともに大野先生の
石狩の舞台を見る事が出来たのは、とてもいい時間であったと思う。
ふたりが直に向き合っていたなら、その対立軸は時に無視か喧嘩の修羅
を孕んでいた事だろう。
大野一雄の舞踏は、それらを包含し優しく命の源泉への眼線、
<みちゆき>へと変えたのである。

*「大野一雄頌ーみちゆき」ー2月12日まで。
 am11時ーpm7時
*高臣大介ガラス展「冬光(ふゆひかり)」-2月16日(火)-22日(火)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2010-02-12 12:12 | Comments(0)


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