先日岡部亮さんが来る。
昨年末、紙魚豆コレクシヨン六集目を出版したばかりだ。
文を奥さんの新明史子さん、挿画を彼が描いている。
日常の風景と心象が綴られて完成度の高い豆本である。
しかしながら、本来岡部亮さんは優れて彫刻家でもある。
昨年ぽつりとその彫刻への乾きを口にした。
今は生活上の事もあり、ここ数年以上彫刻刀を握っていない。
私はそろそろどうかと進言したのだが、彼は迷いつつも訪ねてきたのだ。
子供の養育のこと、経済のこと、生活上の色んな話をした。
そして結論。今年の11月に久し振りの個展を決める。
まだ紆余曲折はあるだろうが、とにかくするのだ。
私のところでは過去2回個展を以前のスペースでしている。
豆本のシリ-ズもここと芸術の森美術館だけで販売している。
何故か深い信頼感が私たちにはある。
その中でひとつの事が決まったのだ。
生活上の多難さは、それぞれの状況の差異はあれ同じである。
大野一雄先生のいう<思いは現実、現実は思い>。
この<思い>で行こう。そう語り合った。
藤谷康晴さんから、久し振りの便りがある。
東京に今いるという。
多くの刺激を貰ったようだ。
珍しく長文のメールである。
一昨年の個展以来長く沈黙を続けていた彼は、この空間で最初の個展
を開いたのは’06年の7月の事である。
前のスペースの最後とここでの最初の個展はガラス作家の高臣大介さんだが、
前の空間を知らず一番最初にここを使ったのは、藤谷康晴さんである。
次に村岸宏昭さんが続くのだが、純粋にこの空間になってからの交友は
藤谷さんが最初なのだ。
当初予定していた都心の画廊をキャンセルし開かれたここでの最初の個展
以降は、数々のライブドローイングを月に一回のペースで各所で開き、
作品も飛躍的な変貌を遂げた。
私はいつも心の底でテンポラリーが彼の軸場であると思っていた。
月一回という過剰なペースで1年間展示を続けた藤谷さんは、開いた分
だけ閉じるようにその後の活動が止まるのだった。
そしてどうしているのかと内心気になってはいた。
彼とムラギシの会場交替の時、ふたりが交わしたバトンタッチ、ハイタッチの
掛け声は忘れられない光景であった。
今また3年の時を経てこうして彼から長文の熱い便りが届くのは
とても嬉しい事である。
長文のメールは、近々会いに行きますと終っていた。
何の財産ももうないけれど、この場で札幌を、石狩を深く生きる。
その垂直な軸心のみは、深く広く心の資産である。
往還する友人の年齢、性別・時代を超えた磁場を、
<想いは現実、現実は想い>と、
大野先生、私は感じているのです。
*「大野一雄頌ーみちゆき」-1月27日(火)-2月12日(金)
am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503