2010年 01月 24日
何故こうも激しく人は死ぬのか。 昨晩普段着のまま、友人ふたりと斎藤紗貴子(千穂)さんのお通夜に出る。 急な事にも拘わらず、小さな葬儀室は満員だった。 道に迷い着いた時はもう、施主の弟さんの挨拶が始っていた。 引っ越したばかりのアパートの一室で18日に急死。発見は22日。 司法解剖の結果死因は心不全。 多くの困難を抱え、ひとつづつ闘い抜いてきた末の孤独死だった。 帰り際、友人の方が今年10月に予定していた斎藤さんの舞台公演構想 を印刷したものを見せてくれた。 今は、「天空の・・」というタイトルだけが記憶に残っている。 多くの友人たちをスタッフとして配し、相当大掛かりな舞台公演構想だった ようである。 シナリオライターとして某学園で教師もしていた斎藤さんの最後の夢の舞台 だった気がする。 後日この舞台構想の印刷物は送ってくれるという事なので、詳しい事は 書けないが、彼女の最後の夢がそこには織り込まれていると感じた。 あれは遺書だなあと思う。 <天空の・・>という、うろ覚えの表題に、今心が動かされるものがある。 そこに最後の個展となった風船による写真展示の会場が重なるからだ。 バルーンに糸紐を付け、そこに写真を括り会場に幾つも浮遊させた展示。 父上への追悼と自らの苦境からの脱出願望が、そこにはあったような 気がする。 今、死という絶対枠の中で死者を思う時、生者はいつもある困難に直面する。 死が生前の意思を純粋に凝縮し、結晶のように感じさせるからである。 猥雑で煩雑な日常は除去され、故人の意思のみが純粋に結晶し立つ。 残された者は、その前でたじろぐのである。 この時我々はたじろぎながらも、いささかでもその事実に真っ直ぐに向き 合わなければならない。 日常の水平線からその引き裂く境に、耐え、深め、高めねばならない。 精神の深み、高みの垂直軸が問われるのである。 その事が唯一死者への真の弔いなのだと、そう思う。 大野一雄先生の石狩河口公演を振り返り、その生と死の境界(さかい)の 舞踏の記録展を、森本めぐみさんの新作とともに展示を決めた日に、 斎藤さんが亡くなっていたという偶然が、今はある必然のようなもの に感じられるのだ。 そして、「天空の・・」と題された夢の境界(さかい)に、 彼女の魂はこの時この舞台に、何を見詰めようとていたのだろうか。 *「大野一雄頌ーみちゆき」展ー1月27日(火)-2月12日(金) am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-01-24 12:54
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Comments(4)
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ナカムラ
at 2010-01-25 12:18
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斉藤千穂さんが亡くなられたんですか・・・。残念です。
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kakiten
at 2010-01-26 10:36
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ナカムラさん>陰画紙でしたでしょうか。坪川くんとあなたと斎藤さん
の同人誌でしたね。あの時が最初に出会った頃かと思います。 こうして目黒であなたと再会し、今また斎藤さんとお別れと、 人生は出会いと別れの織り成す不思議です。
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ナカムラ
at 2010-01-26 13:29
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そうです、「陰画誌」でした。斉藤さん、坪川さんと朝まですすきので議論したのを思い出しています。そういえば先週赤坂見附の乾ギャラリーという陶器のギャラリーに8年ぶりに伺ったら閉店されるそうで、セールをされていました。吉川正道さんと鯉江良二さんの焼物がありました。吉川さんのお皿を買って来ましたが、ものとの出会いをふくめて一期一会をかみしめています。
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kakiten at 2010-01-28 11:09
ナカムラさん>吉川正道さんが出てきましたか!
そうか、常滑5人展、最初の展覧会です。 本当に、「燃える街角器の浪漫」のキャッチフレーズの 時代ですね。 乾ギヤラリーも懐かしい響きです。 鯉江さんが常連だったなあ。 あらためて時間を噛み締めています。 ありがとう! |
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