2010年 01月 16日
猛吹雪の朝。雪で真っ白になり地下鉄に駆け込む。 ほっと息をつき、まもなく次の駅のアナウンス。 ”ネクストステーシヨンイズサッポロ”と英語に続き、 次の駅はサッポロと日本語。 もうここを札幌駅とは言わない事に気付く。 D丸札幌店前と引き続きコマーシアルが入る。 そう思うと上下に何かが付随した札幌は多いが、シンプルに さっぽろと呼べる札幌が少ない事に気付かされる。 そう、この地下鉄のひとつの駅名だけ。 かって人口は少なかったが、さっぽろはもっと広かった。 そして周りも広かった。 賀村順治さんの生まれた新琴似は、泥炭地。 唐牛幸史さんの生まれた月寒は、草原。 私の生まれた札幌は、時計台の鐘の音。 1985年山田秀三さんの書いたさっぽろは、「春楡の茂る札幌」。 さっぽろは、今よりはるかに広かった。 人口と面積の拡大と反比例するように、さっぽろは今地下鉄のひとつ の駅名呼称の大きさしかない。 さっぽろは一地点に矮小化し、抱擁する世界の広さを喪失してきたのだ。 この現象は一軒の家屋の保つ世界と、マンシヨンの一室の世界に似ている。 量数的には増量したが、個々の世界の広さは反比例である。 区切られ、仕切られた個室。隣近所との会話の非共有。 住人だけではなく、故郷の山河との有機的な関係。 世界の関係性は呼称の包含する広さに反比例する。 ”さっぽろ”はひとつの駅名の呼称となり、 マンシヨンの何号室という呼称にも相似する。 この現象はさっぽろだけに止まるものではない。 世界は相対的に分離・分類され整理され得るが、ひとつ、ひとつの世界 は限り無く狭く、点在に近付いて閉じてくる。 ひとつの地名から世界が有機的に広がる事を停止し、ピンポイントの点の 孤独・孤立に近付いている。 乗車中もひっきりなしに手元のケイタイを覗き込む人を見ていると、 小さなケイタイという小舟に乗って漂流している、心の難民を思うのだ。 やがて地下鉄の案内は告げる。”次の駅は北18条”-。 再び真っ白に吹雪く地上に出る。 ああ、世界は寒く、広く、美しい。 アイラブ ふゆ。 *森めぐみ展「くものお」-1月17日(日)まで。 am11時ーpm7時 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2010-01-16 12:22
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Comments(4)
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吉田
at 2010-01-16 22:34
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あなたが求めているのは格差社会の憧憬にすぎない。そのような事を離れたところで、あなたの本領が発揮できるのだおると思います。どうか、地を離れていただきたい。
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kakiten
at 2010-01-17 13:35
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吉田さん>憧憬や夢を「・・・過ぎない」と断言できる人こそ
すでに<地を離れて>ある高みに立って見下ろしている 縁台将棋の観客の評論である。 社会への対峙も俯瞰も凝視も無い<ブンベツ>のお立場 と思います。
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ナカムラ
at 2010-01-18 14:33
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その後、このブログを継続して読んでいます。一人の人間の思念がめらめらしていて、それに呼応するさまざまなネットワーク。こうしたコミュニティーの連鎖の先にこそ、町とか都市とか呼ばれるものがあるべきなんでしょう。札幌の感じ方、離れてしまった私には正直わかりませんが、札幌以上にその他の地方都市での反比例的な空洞化をみると、恐ろしくなります。昔、札幌市の職員が神戸に出張し、タクシーで神戸を人口で抜いたと自慢したら、皮肉ではなく「暮しにくくなったでしょう。それはお気の毒に」といわれたという話を聞いたことがあります。でも、それぞれの持ち場で小さな闘いを続けることが何かにつながるのではないか、と思っているこのごろです。
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kakiten at 2010-01-19 09:42
ナカムラさん>そうですね。それぞれの小さな現場。その小さな闘い。
そのことの有機的な繋がり、連鎖こそが真のリアリテイーを確保する ものと思います。こうしてふたりの長い時間を超えて今、語り合える 事が正にその証しでしょうね。ありがとうございます。 |
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