午後不意に痩せた人影が入ってきた。
目黒美術館の正木基氏だ。
昨年末美術館で会って以来である。
昨年の「”文化”資源としての<炭鉱>」展で借りた作品を返還しに、
北海道に来たという。
あれだけ多くの作品を各地から集め、さらに戻すという仕事がある。
美術館の仕事も大変だなあと思う。
上京時のお礼もそこそこに、話題は現在展示中の森本さんに関心がいく。
吹き抜けに上り、写真を撮る。
作家もいたので、何故こういう展示にしたのかと質問し早速に優秀な学芸員
の本領を発揮する。
日本でも有数のキューレーターのひとりである正木さんが見てくれる機会は
滅多にない事で、森本さんにはとても恵まれた時間だ。
夕方ホテルにチェックインしその後飲もうかという事になり、ここで待ち合わせ
閉廊後近くの焼き鳥屋に行く。
’80年代正木氏が道立近代美術館時代、まだ大学院生だった川俣正を札幌に
招き、テトラハウスプロジェクトを企て、その企画に協力して以来の付き合いだ。
’90年代正木氏は東京・目黒に転勤となるが、彼の蒔いた種は昨年暮目黒美
術館の彼の企画展に結集し多くの友人たちとの再会ともなったのだ。
酒を飲みながらギヤラリーの今後の在り方等についても多くの示唆を受ける。
帰り地下鉄途中まで一緒だったが、私が乗換えで先に下りると、彼は車両口か
ら降りて握手をしてくれた。
この時何故か目頭が熱くなった。
ふたりの話は多岐に及んだが、本質はふたりの長い信頼と友情である。
その熱さが、胸にじんときていたのだ。
乗り換えた地下鉄の中で酔いがまわり眠り、一駅乗り越す。
気が付くと正木氏と出会った円山北町の駅だった。
きっと時間が遡り、往復したのだろう。
内向きの時間と開く時間が交錯して、地下電車はその時空を回っていた。
*森本めぐみ展「くものお」-1月13日(水)まで。
am11時ーpm7時。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503