2009年 11月 22日
最近日本の食料自給率が問題になっている。 日本の自給率は40%程度という。 いかにも日本的な料理も素材の元を辿れば、 ほとんどが海外からの輸入素材だったりする。 グローバリズムの弊害が顕在化してきたのだ。 それは食物だけではない。 都市の構造を見ても、そこを埋めているのは地元自給ではない。 市街地再開発法で道路を拡幅し大型のハコ建築をたくさん造り、 海外ブランドも含め地元外のテナントを沢山誘致し埋めてきたのだ。 そういう歴史がある。 その結果固有の風景を喪い、今は産業経済構造も、自給率を下げている。 景気が低迷し空いたハコの増加も多く見られるのである。 文化の問題もそうである。 立派なハコを造り、有名アーテイストを誘致し、ブンカ、ブンカと喧伝する。 ここ固有の文化の自給率は低いのである。 札幌のような新開都市は、特にそんな有名ブランドに弱いかに思える。 しかし百余年も経て、もうそんな事は言ってはいられない。 自らの固有性を意識的に、文化の自給性として自覚すべきなのだ。 「sapporoをアートの街に」と題して、昨日の新聞に一面特集が載っていた。 アートを産業起爆剤にと、創成川公園オープンと札幌駅前通地下歩行空間 のオープンを機会に札幌ビエンナーレを企画し、アートの街を目指すという 内容のようである。 さらにアートデイレクターなるH氏は、札幌での国際展の意義を、 ・・雪が多いために発達した地下道や、原生林などを会場にしたら。 世界で唯一の芸術展になりますよ。 と語っている。 素材やインフラのみがアートの要因である筈がない。 ここに決定的に欠落しているものは、原生林と地下通路の間の歴史 札幌という日本に稀有な純粋近代の視座である。 例えば官製建築とはいえ優れた近代の遺産、赤レンガの道庁庁舎、 植物園、清華亭、北大構内、さらにそこを繋ぐ民間の伊藤邸という メム(泉池))、旧河川沿いに広がる近代建築物と原生林の面影。 そうした札幌独特の近代風景への視線が欠落しているのだ。 点ではなくゾーンとして広がる札幌独特の風景を面として、保存し活用する 視座がなくして、ここ固有の文化の自給率はないのだ。 前にも引用したが、北原白秋の記した「この道」の近代札幌は、ゾーンとして 固有の風景を保っていた札幌の北一条通りである。 地下通路には雨風・雪を防ぐインフラはあっても、文化の「この道」はない。 原生林という、かって対峙し克服しなければ生きていけなかった猛自然と、 現代の地下通路からどうして、現代に繋がる文化の回路が生まれるのか。 先人の苦闘、成果という正統な近代への視座を欠いて、外から文化を呼び 込むだけの文化インフラ、アートブローカー的な視野しかそこには感じられ ないのだ。これは冬季五輪前後の高度成長時代の産業経済構造と同じ 意識構造である。 かってブランドテナント誘致に奔走した意識構造そのままに、衣を変え、 文化という名の誘致構造に切り替えただけの事ではないのか。 その前に自らの風土をカルチヴート(自耕する)する事が、 真に文化(カルチャー)の自給率を高める事ではないのか。 近代の優れた遺産を食い潰す事に加担しつつ、正統な伝統を省みる事なく、 何処に外に魅力ある場を提供する事が出来得るのか。 国際総合芸術祭(アートビエンナーレ)が、アートの冬季五輪のように 五輪後の札幌原風景破壊に働きかねない事を思うのである。 *鈴木悠哉展「トレモロ」-11月29日(水)まで。月曜定休・休廊。 am11時ーpm7時 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-11-22 14:27
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