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2009年 11月 17日

透き通る時間ーkind of blue(12)

定休日の昨日、唐牛幸史さんと歩く。
先日Fさん、Mさんを案内したと同じ道。
ただ少し違うのは、出発地点を地下鉄西28丁目駅にした事だ。
唐牛さんと出会った川俣正のインスタレーシヨン「テトラハウス326」地点
をスタートに入れたためである。
北3条西26丁目旧遠藤宅が在った場所が、テトラハウス326なのである。
そこを経由してアートイヴェント「界川游行」の道を案内する。
懐かしい銀杏の木がぽつんと一本だけ立ちつくすようにある。
旧中森花器店跡を抜ける。
裏の木造2階建てのAアパートも取り壊され、工事の人が忙しく整地作業を
している。その先テトラハウス跡は、某ビル駐車場になって跡形もない。
そこから昔重兵衛沼と呼ばれたという公園を通り、音楽スタジオのある
Gクレフの建物脇を抜ける。
3年前世話になった熊谷宅のある小道から旧鬼窪邸跡に出る。
ここももう、タワーマンシヨンが見下ろすように聳えている。
彫刻家戸谷成雄が展示し、前庭で詩人吉増剛造が朗唱した空間である。
田上義也の初期名建築だった洋館の端整な佇まいも、今は幻である
そこから細い路地を抜け、円山公園駅脇に遊歩道となっている界川を歩く。
かっての川の上に立つ中央分離帯の凛々しい街路樹に”オッス!わが友よ”
と声をかけ、唐牛さんにも紹介する。
この樹が並列する木々たちの中で、一番格好良いでしょうと教える。
水脈に触れているから勢いがあるのよと教えた。
植樹されたものだが、その地下の水脈に触れ命を育んでいる姿に、
私は強い友情を感じるのだ。
この地に移住してきた者の末裔として、私は同じ命の姿を感じるのである。
さらに遊歩道を進み、佐藤家の蔵を横に見ながら昔橋が架かっていたという
道を右に曲がり、参拝の直線、祈りの道を通り円山墓地に出る。
墓地はオリンピック時に出来た環状線がふたつに断ち切っている。
その横断歩道を抜け、古いアパート脇を抜け、円山原始林に入る。
一瞬にして空気が変わる。深い森の空気になる。
大木の立ち並ぶ山裾を辿り、円山川沿いに源流へと歩く。
途中桂の古木脇を抜け、旧滝の沢集落と呼ばれた名前の由来となった
不動の滝まで歩き進む。
この何日かの雨で川が増水して、今まで見た内で一番流れが激しい。
白い波頭が美しい。川傍に一本のピンポン玉程の実の生っている樹があった。
唐牛さんが見つけて実を採りかじる。香しい甘い匂いが辺りに漂う。
梨だと唐牛さんが言う。小さいが完熟して甘く美味しかった。
滝傍の祠に居るお不動さんに挨拶して少し戻り、急坂を登って神社へと出る。
そこからかっての滝上の橋を渡って旭山公園に抜け、山下邸へと向かった。
山下邸には美術館のSさんが見えていた。すっかり腰を落ち着けてしまった
と言う。初対面だったが、目黒美術館の正木さんと一時一緒という事で
その頃の話が弾んだ。
山下邸を出て伏見稲荷の旧石段を下り、琴似街道へと出る。
途中公園壁に印刷された古い地図を見て、そこに記された養狐業の宣伝広告
に唐牛さんがいたく感心している。
そこから琴似街道を下り藻岩村から円山村の旧村境を実感しながら出発地点
へと戻る。ふと思い立ち熊谷宅を訪ねる事にする。
折り良く熊谷さんも在宅で、足を伸ばし休息した。
何気なく傍にあった今日の朝刊を見ると、美術欄に村田真さんが目黒の
「”文化”資源としての<炭鉱>展」の展覧会評を書いているではないか。
村田真さんは川俣のテトラハウス展示時、「ぴあ」の編集長で来札していた
人である。不思議な縁だなあと唐牛さんと顔を見合わせた。
十勝にふたりで先週旅した時も、その日の朝刊一面に同じ展覧会の記事が
掲載されていたのだ
熊谷さんがいそいそと湯豆腐鍋を用意してくれ、体もすっかり暖まる。
そこへひょっこりとニューヨーク在住の中岡リエさんが顔を出す。
今朝札幌に着いたという。今晩は熊谷宅に泊まるという。
初対面の唐牛さんとすっかり意気投合して話しこむ二人を残し、私は
この長い一日の旅を終え帰宅した。
有機的な風景の中を歩きながら、今は消えた村々を廻り、近代と現代の時空
の界(さかい)をも歩いてきた。
そしてそれは同時に、私と唐牛さんの時空を旅する旅でもあった。
そこに偶然のように我々のテトラハウスの原点ともなった正木氏も
色濃く顕われたのだ。
時間の函が時の現象を超え、トランスペアレントになった日。
雨が降り、透き通るような一日だった。

*鈴木悠哉展「トレモロ」-11月11日(水)-29日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503。
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by kakiten | 2009-11-17 12:59 | Comments(0)


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