3日かけて制作展示終り、初日を迎える。
明るい枯葉舞う感じ。
壁にランダムに貼られたドローイング主体の構成に対し、
床に置かれた立体のポイントが効いている。
吹き抜け上から見ると、床板に白と黒の円錐形の立体物が
床板に印象的だ。
全体に縦構造の空間の特色に呼応しているかのようだ。
淡い色の線の描画が若さを感じさせ、初冬、晩秋の今の季節に、
明色を感じさせる。
北は北でも、福島の秋だろうか。
今朝駐車中の車の屋根は白く濡れていた。
山は秋枯れの木々の上に、白い冠雪がうっすらとたなびいて見えた。
玄と白の北の風景である。
津軽から来札したNくんは、札幌の春風をオレンジに感じたそうである。
福島から来た鈴木悠哉さんは、同じ東北でもその違いをどう表現し感じて
いるのだろうか。
この展示を見る限りはその新鮮な相違を感じる事はない。
旅が保つ浮遊と越境の行為が、ここでは浮遊性の方にスタンスがあると
感じるのだ。
ただ床に置かれた円錐形の黒4点白1点のオブジェに彼の垂心を見る。
床からあちこちに縦に立て掛けられた巾5cm長さ40cm程の細身の板は、
垂心から発する水中植物の茎にも見えて、地から発芽したものというより
漂う浮遊するものが地に根付こうとする意志のようにも見える。
旅の浮遊性から他界の発見へと、界(さかい)の位置はまだ明確ではない。
しかし彼の旅が浮遊性からある転機を迎えつつある過渡期の作品展として
今しか出来ない全力投球の個展として、作家の記憶にきっちりと刻まれる事
は間違いないと思える。
一方見る者にとっては、旅の浮遊性と微かな根の先を感じて、ある種の心地
よさに浸れる空間となっている。
それは現代社会のある種のボーダレス気分が、空間にそのままに反映され
ているからなのかも知れない。
真の界(さかい)を喪失して、区別・差別・分断の断面社会を漂流する若い
難民の明るい影がそこにはある。
*鈴木悠哉展「トレモロ」-11月11日(水)-29日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休・休廊。
*森本めぐみ展ー12月中旬予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503