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2009年 11月 07日
空気が甘かった。雲ひとつなく、空が広い。 北海道の背骨日高山脈が屏風のように遠くまで連なっている。 十勝千年の森の近く、清水町の丘に登る。 遠くに帯広市街が霞んでいる。 日本海と太平洋の違いだろうか。石狩の空気とは違う。 初めて十勝の国を体験した気がする。 今まで何度か帯広市には行った事はある。 しかしそれは、都市から都市への移動に過ぎなかった。 十勝の国に位置する帯広ではない。 唐牛幸史さんの車で5日の朝札幌を出発。 夕張を経て日勝峠を越える。 険しい山道を過ぎ一面に広がる十勝平野。 もう別の国なのである。 ひたすら緩い傾斜を下り、帯広市街を目指す。 駅に着き車を駐車場に入れ、梅田正則さんに連絡する。 駅地下の市民ギヤラリーで待ち合わせ。 「私の作品・今昔」展が展示されていた。 ざっと見るが、作品数が多過ぎて散漫になる。 目に付くのは、十勝の自然を素材にした作品が多いと思う事だ。 やがて梅田さんが現れ、彼の下宿に行く。 あっ、思わず下宿と書いた。正確にはマンシヨンの一室である。 雑多に物の積み重なった部屋で、野郎三人寛いだのだ。 久し振りに大学時代の友人の下宿を訪ねた感じである。 足を伸ばしぐたぐたと雑談して、4時間近い車の旅の疲れを癒したのだ。 唐牛さんとは初めての旅である。 川俣正のテトラハウスプロジェクト以来初めて、ふたりの旅を重ねていた。 旧山下邸での梅田さんと唐牛さんの出会いが、今回の旅のきっかけとなった。 先日出会ったばかりの梅田さん、唐牛さん。 もうふたりは旧知の友人のようである。 6時に仕事が終ると人形作家伽井丹弥さんから連絡あり、そちらへと向かう。 着くと伽井さんのブログでお馴染みの猫、伽藍が迎えてくれた。 足下に擦寄り匂いを嗅いでいる。 伽井邸は、人形の館小さな美術館のようである。 程なく帯広の美術家の池田緑さんも見え、ビールで乾杯した後 豆乳の鍋を囲んだ。 夜伽井宅に3人泊めて頂き、翌朝お母さまと伽井さん手作りの 美味なる朝食をご馳走になり、千年の森へと向かった。 私は前夜午前1時ころにもう眠くなり寝たが、3人はさらに3時近くまで 話し合っていたようだ。 猫の伽藍とはすっかり親しくなり、寝床までついて来て、鼻を舐められる。 ふたりの作家の対照的な、濃密にして凝縮された個性的な個空間から、 千年の森近くの清水の丘から見た広大な十勝平野。 この対比は私に充分な十勝体験を味わわせてくれた気がするのである。 市民ギヤラリーで数多く見た作品素材の良さは、十勝の自然そのものである だろう。こういう自然に囲まれて作品を創り続ける為には、伽井さんや梅田さん のよう凝縮する<個>空間が必要な気がする。 囲繞する自然に呑み込まれない為にもである。 神田日勝の「室内風景」の必然性を思っていたのだ。 十勝平野の雄大さとは作家にとってそういう存在であるのだ。 個としてこの自然に拮抗する為の必然が、部屋であるように在る。 僅か百余年の近現代を、呑み込んでしまうような天地が十勝にはある。 勿論原野を森を開拓し、フラットな牧草地へと改変してきた事実もあるのだが あの空、日高連峰、風の空気感にはまだ手付かずの十勝がリアルに 存在しているのである。 このリアルに立ち向かう個の現実は、濃密な部屋しかないからである。 対照的なふたりの部屋・館はそうした十勝に生きる作家の真摯さとして 私には感受されたのだ。 そして車で唐牛さんと旅した車中の時間も、’83年夏川俣正テトラハウス から過ぎてきた遠く長い時間に囲繞された今に創られた、凝縮された部屋 の時間でもあったように思えるのである。 26年の時空を超えた、ふたりの道行きの車旅でもあった。 帰路は狩勝峠を越えて札幌に入る。 途中月寒で育った唐牛さんの古い月寒の町の話を聞きながら、 我々の石狩から十勝への時空の道行きは終ったのだ。 *鈴木悠哉展「トレモロ」-11月11日(水)-29日(日) am11時^pm7時:月曜定休・休廊。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-11-07 15:30
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