時間が経つと風船の調節が要る。
錘を軽くしたり、重くしたり。
高さの調節が会場のゆらゆらの風景を変える。
雅さんが来て風船の調節をしていた時、外は強風だつた。
外の看板の紙が風に煽られ、飛びそうになっていたので、
戸を開けて直しに出た。
その隙間から一瞬にして2個の風船が外へ飛び出す。
風船はあっという間に空高く舞い上がり、彼方へと消えていった。
魂が空へ召されたのよ、と斎藤さんが呟く。
今回の隠されたテーマ、お父さんへの追悼が図らずも実現した瞬間
だったのかもしれない。
見えない空気の流れが、時と同じように漂っていて、朝来ると上の方に
ふたつが寄り添い二階の窓際に居たりする。
まるで仲良く肩を並べているかのようだ。
一番最初に浮かべた一個の風船だけが、何故かいつも中心に居る。
こいつが、初日奥の部屋の私の定席に鎮座していた奴である。
一週間近く一緒に暮らしていると、風船にも個性があるかのようである。
ヘリウムガスの微妙な気圧によってそれぞれの浮き方が違う。
午後の光で、南窓際から見る風景が綺麗である。
西側入り口ガラス戸からの光と、何もない白い壁が透明な影を漂わすからだ。
10月も最終日、天気予報にも雪だるまのマークが載りだした。
週明けには街にも初雪予報。
紅葉に白い雪の競演が見られるかも知れない。
雪翳札幌。冬の年。
*斎藤沙智子展「明日への自由」-11月1日(日)まで。am11時ーpm7時。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503