競馬場沿いの壁、蔦の廻廊が赤みを増している。
枯葉も増えて、吹き溜まり。
画廊に着き奥へ入ると、風船がひとつ いつも私が座る場所にふんわりと居る。
そうか、待っててくれたのね。
石田善彦さん?ムラギシ?坪川光世くん?
何人かの、死者の名が浮かんだ。
名翻訳家にして音楽青年だった石田善彦さんの命日が今週だ。
ちょうど3年経つ。
ムラギシの本に、白樺を抱いて耳を澄ます石田さんの写真がある。
死の何日か前、ムラギシの才能を熱く語っていた石田さんがいたという。
今頃ふたりは心置きなく存分に、音楽を語り合っているのだろうか。
外では葉が舞い、内では風船が舞う。
心も浮遊して、遠いはずの記憶が片隅から舞い上がる。
奥の部屋まで舞い込んだ風船が、そんなことを刺激したのだろう。
見えない空気の動きが、炎のように可視化する。
枯葉も風船も火のない炎だ。
そこに見えない魂の思い出も甦る。
生と死の間が、豊かに記憶の火となって開くからだ。
浮世の浮遊軸が、死者の縁取りされた窓口でふっと立ち止るからだ。
昨日はまだ若い母さんのおしゃれの冒険を思い出した。
あの時古い家は、母さんの「人形の家」だったのかも知れない。
時々死者は記憶の炎を燃やして訪れてくる。
斎藤紗貴子さんの個展が招く時空の所為かも知れない。
彼女の父上の命日は今日と聞いた。
*斎藤紗貴子展「明日への自由」-11月1日(日)まで。
am11時ーpm7時
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503