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2009年 10月 14日
’80年代から’90年代へかけての仕事が、今また問い直されている。 東京・目黒美術館「’文化’資源としての<炭鉱>」展、来月から開催。 ’92年の佐藤時啓展、’94年の吉増剛造展、’97年岡部昌生展、 同年12月畠山哲雄展のテンポラリーでの総括を、今問い返している。 何故あの時夕張に惹かれたのか。 当時札幌とは対極にあった都市夕張に、透視するように札幌を見ていた。 夕張や他の産炭都市からの流入人口も加えて、冬季五輪以降拡大しつづ けていた札幌と、石炭から石油へのエネルギー資源転換に伴ない廃れて いった夕張。その対蹠的な都市風景に重なるポジとネガを見ていたのだ。 繁栄のなかの、内なる廃墟。廃墟のなかの、内なる繁栄。 明視と暗視の反転する都市として、私には夕張が在った。 20枚のカタログテキストの為の原稿を、このところ書き続けて 何とか目鼻をつける。 思えば、豪雨による見えない暗渠の川の氾濫から不可視の札幌を見、 美術家川俣正のテトラハウスプロジェクトにより、日常の街角が変貌した。 このふたつの形而下、形而上的暴力によって、私の世界の見え方は 変わってきたのである。 自然の氾濫と、美術の叛乱によって街の風景は、日常から乖離し 別の世界を垣間見せたのだった。 そのふたつの契機があって、私の夕張への視角が生まれた。 廃墟は廃墟のままに、その頃の夕張は豪壮な産業遺構物がそのままに 放置され散乱していたからである。 一方の札幌という都市は、新たな構築物、道路が次々と施工され廃墟の時 間は塗り込められ、夕張とは違う位相での破壊が進行していたのである。 拡幅され整えられた舗道の下に、高層ビルの群立の間に明るい破壊が 埋もれていた。 札幌はサッポロ仕上げに急速に衣を変え、私の父や祖父の生きたさっぽろ は埋め込まれなくなっていた。 そのサッポロを反転するように、その頃私は夕張を見ていた。 夕張では、<用>を喪失した巨大な建物がものとして風化し、 逆に存在感を増していた。 札幌では、消費の<用>を追い求める巨大なビル群が、公共事業として 増加していた。 夕張真谷地には、往時の頭脳室最上階のコンピューター室が 盤面だけを残し、放置されていた。 机上には書類が散乱し、中に海外からの視察団の写真も捨てられた ままにあったのだ。 当時最新鋭の設備を視察に来たのだろう、外人の真剣な顔が写されていた。 <会社は家族である>、そんな意味のスローガンも貼られていた。 虚構の家族は会社の消失とともに、家計簿にあたる帳簿も記念の写真も すべて放置して、そこから人間だけが消えていったのである。 本当の家族ならそんな捨て方は絶対にしないであろうと、 そのスローガンを見ながら思っていた。 ただ、ただ、人間のエゴが人間とともに消え去り、モノだけが残され 朽ちる時間の内に在った。 その朽ちる廃墟の時間は、とても深く優しく柔らかいものとして、 その時私には感じられたのだ。 新しいことだけが特権のような、傲慢で冷たい格差の象徴のような都市風景に はない暖かささえ、夕張の構築物には感じられたのである。 それは私の夕張への視座であって、あくまで札幌から発した視座であると思う。 その後それらの廃墟化した多くの建物は、撤去され更地となった。 振興助成金の条件が、更地が条件だったからである。 これは米作の減反政策に似ている。田んぼを壊し補償金が出る仕組みである。 今はもうないあの美しい廃墟群は、その豪壮な佇まいとともに、人間が何らかの 使い方さえ保つならば、間違いなく再生できたはずの構築物である。 昨日記した山下邸と同じなのだ。 人間がそこにいれば、優れた建物は喜んで建物自身もそこに住み、活き活きと するのである。活き活き、生き生きと<生活>を回復させ、再生するのである。 <生活>の本義を、インフラの<用>におとしめ、殺してきたのが狭義の都市 化なのだ。その時点で、サッポロも夕張も同じ位相の陽画と陰画の両面なの である。 夕張は陽画化して、明るい廃墟としてその後の過程を進んだ。 札幌は陰画化して、さらなる明るい廃墟となりつつある。 炭坑夫さんたちの生産する坑道は、札幌では消費するだけの穴倉化。 ビルの穴、通路の穴と化して、<消費は家族>のようにその明るい穴倉へと 取り込むパック装置群の街となっている。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-10-14 12:50
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