岩見沢でのアートイヴェントを終えた映像作家大木裕之さんが来る。
今年5月の「メイ」撮影行以来である。
早速村岸宏昭さんの作品集を見つけ、購入してくれる。
立派な本だなあ、が第一声。
四国・鏡川で村岸さんが遭難死した際、身近にいたひとりでもある。
3年の月日が経ち、今も心に残る人の死がある。
その人生がぎっしりとこの本には詰まっている。
一緒に来た写真家のM夫人も一冊購入してくれ、
ふたりはしばらく無言で本を見ていた。
その後藤倉さんも交え、彼の個展会場で話す。
今回の会場構成に大木さんがしきりに感心する。
写真展でこんな展示は見た事がないと言う。
床に胡座(あぐら)で、寛いでいる。
こういう彼の姿も、ここではあまり見た事がない。
映像の人だから、やはり写真作品にも興味があるのだろうが、
逆に近い分普段批評はあまりしないからだ。
構成されたテーマ毎の展示を、吹き抜けの空間を縦に利用し会場中央に吊ら
れた大きなネオン管の写真とテーマを述べた挨拶文が、分散しがちな会場を
きりっとひとつに集約している。
この構造的な視線は、映像作家大木裕之の映画監督としての視座と重なって
いるとも思える。
個々の写真を別にして、会場構成をここまできちっと見てくれるのは、
映像作家の監督としての視線と思う。
写真の視座構造もそうだが、会場構成自体にもその視座は貫徹されていて、
4つの主題が作家世界に収斂され構成されているのだ。
その構成力を見抜いたのは、なによりも大木裕之の映像作家としての眼である。
写真という平面構成の世界が、会場構成という立体構成にまで及ぶ写真展は
そうあり得るものではない。
多分大木さんはその事実を感じていたのだろう。
東京にもないね、と呟いていた。
東京はどうでもいいが、数多く場を見ている人の言葉として、
素直にその言葉は嬉しかったのだ。
*藤倉翼写真展ー9月22日(火)-10月4日(日)am11時ーpm7時
月曜定休・休廊。
*「自分を代表させるような仕事はまだありません」-村岸宏昭の世界ー
A4変形版160頁(内カラー96頁)CD2枚別冊・楽譜集付き。
定価2000円+税・残部僅少。
*谷口顕一郎DVD「The Trail Hecomi」(AD&A gallery製作)3600円
同上HECOMI STUDY 2003-2008-カタログテキスト
(MIKIKO SATO gallery製作)1500円。残部僅少。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503