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テンポラリー通信

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2009年 09月 13日

通り雨ーSeptember Voice(12)

さっと音がして、雨が降る。
通り雨。
自転車の30分。朝濡れずに着いた。
珈琲を淹れ、パソコンに向かっていると、
車の濡れた音がする。
シャーッ、シャーッと車の走る音がする。
雨が止んだ後、濡れた路面の音。
静かな空気の日曜日。

88歳を迎える詩人江原光太さんの、米寿のお祝いの会を企画する
打ち合わせが昨日ある。
もう養護施設に入ったというが、これまでの仕事をこれを機会に振り返り、
きちっと見詰めなおす場をもちたいと、詩人のTが相談にきたのだ。
彼は道立文学館での展示を考えている。
ルンペン詩人というか、市井に生きた貧しい詩人にこういう公的な場所は
なかなか進んでは、開放しないようだ。
しかし、江原光太さんの生きてきた時代をきちっと俯瞰する視点を保つ事は、
現在を生きる我々にとって、とても大事な事である。
江原さんの仲間内だけの祝い事にはしたくはない。
戦前戦後を通して、反体制的視点を持続したこの詩人の軌跡は、さまざまな
現在に繋がる大切な要素を保っている。
今こそ公的な場で、江原光太展として俯瞰することの意味は大きく深い。
最近家族の問題で引き篭もりがちな優れた詩人Kや、建設土木の業界紙で
仕事に追われている詩人のYたちも交え、Tと話を重ねる。
江原さんの長い人生には、色々な関わりが交叉していて、そのどれかに
偏ると本質が見失われる恐れがある。
根の部分で時代と表現の本質をどう軸心に据えれるか。
そこが最大のそして唯一の同時代的主題なのだ。
TやYやKや私にとっては、いわば父なる世代に属する江原さんの生き様を
如何にべったりではなく、媒介として位置付けするか。
その軸心があって初めて江原光太展は俯瞰し得る視点を持つ事ができる。
あれもありました、これもありました、またこれだけがいいですでは困るの
である。企画する人間の真摯な現在が問われるのだ。

村岸宏昭さんの作品集が今月19日に出版される。
この22歳の青年の遺事を一冊の本にする事さえ、足掛け3年の時間を要した
のだ。まして、88歳の江原さんの仕事を今展覧会として成立させる為には
さらに多くの努力と時間が必要である、
我々は悩み、迷い、逡巡しながらも、とにかく実現する方向で昨日の会議を
終えたのだ。
そしてこれから、TやKとYとの江原光太さんを媒介とした新たな、垂直な時間
軸の構築をこれからともに創っていく作業に入った事を、今予感しているのだ。

通り雨が過ぎ、地面が濡れしっりと秋である。
昨日の会議がこの雨のように沁み込み、時を深める事を願っている。

*収蔵品展「境界(さかい)の現場」-9月13日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*エレガントピープルJAZZライブー9月19日(土)午後6時~
*藤倉翼写真展ー9月22日(火)ー10月4日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-09-13 12:34 | Comments(0)


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