もう長袖。
肌寒く、風強く、空高く。
この風の源(みなもと)には、冬がある。
北の夏は速く去る。
”芸術の秋”とかいうキャッチコピーに街が踊る。
しかしここは夏の末、冬の始まり。
風の源はそう告げる。
長い春もなく、静かな秋も短い。
旗竿に鉄綱のロープが揺れて、音を放つ。
カーン、か~んと。
空気が澄み、冷気が満ちている。
樹も花も内向きに力を蓄え、命の赤が濃くなる。
長い冬、白い圧力に耐える準備なのだ。
先日Aさんの花日記、山芍薬の実が載っていた。
割れた実の皮の間から、深紅の種子が覗く。
春、清楚な白い花を咲かす命の源だ。
植物の保つ肉食のようなその色、形態。
花だけを愛でる事の一面性をこの種子の様態が教えてくれる。
白米のように精米された風景に源はない。
風景の中に秘められた、玄米の風景を感受せよ。
街は精製された白米のように、簡便な咀嚼に充たされている。
思想の歯を磨き、喪った皮を、殻を、色を咀嚼しなおさなければならない。
冷気を含んだ朝の道を走りながら思った事だ。
*収蔵品展「境界(さかい)の現場」-9月13日(日)まで。
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*藤倉翼写真展ー9月22日(火)-10月4日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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