2009年 09月 09日
年末から年明けにかけて個展予定のM・Mさんが来る。 これで3度目の来訪だが、段々実年齢に近付いてくる。 最初は小学生高学年、次は中学生。今回は高校生に見えた。 そう告げると笑って怒りもしなかった。 旧山下邸を訪ねた話をする。早く見たいという。 来月もうひとりのこちらは本物の高校生と3人で訪ねる予定だ。 今朝夢を見たという。界川を歩いている夢だそうだ。 そうか、ではという事で全2時間4本ある「界川游行アートイヴェント」の内 戸谷成雄さん、鯉江良二さんの収録されているヴィデオを見せる。 旧山下邸と同じ時代の洋館鬼窪邸で、彫刻家戸谷成雄さんが自作の前で 語っている一巻。 もう一巻は鯉江良二さんが界川源流の滝でインスタレーシヨンを している一巻だ。 さらに藤木正則さんが暗渠の川道に巨大な木炭で線を引くパーフォーマンス をしている映像も収録されている。来月歩く前のガイド映像にもなる。 まだ円山の空は広く、タワー系のマンシヨンが少ない。 ちょうど20年前の1989年の映像である。 私まだ2歳とMさんが呟く。 藤木さんのパフォーマンスにも岡部昌生のフロッタージュにも多くの子どもたち が映像のなかに出てくる、面白がって附いて来るのだ。 この子たち位の年齢だねと画面を見る。 主だった建物のいくつかはもう無くなっているのだが、作家と作品は少しも 古く過去のものとは感じられない。 今見る風景の方が虚構にさえ見えてくる。 存在感が薄いからである。そこに時間の保水力が感じられないからだ。 映像にある鬼窪邸、石山軟石の佐藤倉庫。そこには時間がたっぷりと蓄積され ている。そして作品がその時間の水位と同じ喫水線を保ってあるのだ。 佐藤倉庫のオーナー夫妻がその石倉への愛着をポソリポソリと語る場面に 建物とともに地域に生きた人の姿もある。 そうした場に設置された作品群は、日常性としては、<Sence of wondar> (なんじゃ~これ!)でありながらも、遠い川の記憶を甦らせるショック装置として 許される非日常でもあるのだ。 作品を理解している訳ではない。ただ何だか分らないけれど、在る事を許して いるのだ。その存在が、埋もれていた大切な記憶、その場所に保っていた愛着 を呼び覚ましてくれるからである。 日常の時間の推移とともに埋没していた大切な日常。 その記憶が再び光があたり、輝き出すからである。 記憶の中の廃屋に明かりが灯るからだ。 時間の泉源が溢れて、人の心を開放し、言葉となる。 ぽつりぽつりと雄弁ではないが、語りだすのだ。 これは旧山下邸で唐牛幸史さんから聞いた山下トヨさんの話と 同じ性質のものでもある。 時間の垂直軸と現在の横軸が交叉する時の流れの泉源に、 作品が触れるからだ。 時間の垂直軸、時の泉源を保たない現在など、 軽佻浮薄なただただ流れ去る今の一瞬でしかない。 現在の横軸だけを自己目的化した量数を羅列した何百メートルとかいう 地下通路のイヴェントなどに、生きた言葉や作品と時の泉源との交叉 が生じる筈がない事は自明である。 ショウウインドー窓辺の百人とか地下通路何百メートルとか、 ただ数量の形容羅列な空しさを何故感じないのか。 そんな話をMさんとこの映像を見終わってから話したのだ。 川の流れに水源があるように、時の流れにも水源がある。 その泉に触れることこそ、芸術・文化の保水力ではないのか。 その事が20年前経って今も涸れぬ界川の保つ夢でもあるのだ。 *収蔵品展「境界(さかい)の現場」-9月13日(日)まで。 :一原有徳・村上善男・安斎重男・坂口登・黄宇哲・岡部昌生それぞれの 境界(さかい)の現場展 *エレガントピープルjazzライブー9月19日(土)午後6時~ *藤倉翼写真展ー9月22日(火)-10月4日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-09-09 12:14
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Comments(1)
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by
taku 25:00
at 2009-09-09 14:54
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行ってもらえれば、さいきん、足の筋力が落ちたと思い、
歩いたり、自転車も貰ったんで、へろへろと、散策したかったです。
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