2009年 09月 05日
行方不明だったジョナス・メカス「リトアニアへの旅の追憶」の行方が分る。 昨日その事に触れたら、ある人から連絡あり。 言ってみるもんだ。 あの故郷の木の実を掌に載せ差し出す時の老婆の<ウォゴス!> という場面が忘れられない。 昨晩また腰を捻り、冴えない。 普段意識しない何でもない行為が、意識される。 用心深く行動する。今朝は自転車止め、歩きにしようかとも思ったが 晴れてきて気持ちいいのでやはり自転車。 歩く筋肉の方が腰にはいい気がするのだが。 「COTO」vol・18に小樽の詩人高橋秀明さんが花崎皐平論を書いている。 先日来廊の折頂いた。 この詩誌発表前にコピーでは見せて頂いていたが、改めて本で読むと、 見落としていたキラリとする一節に心惹かれた。 <(花崎)氏の現在の見方に至った根本理由は、全共闘ラデイカリズムが、 個の全存在を賭した表現行為であったという側面を見落としたことに由来 しているのではないだろうか。> 自滅的で玉砕的なラデイカル運動という位置付けで、<理性的な活動に弱い> と総括する花崎氏に対して、高橋秀明論文は、孤立しながらも<個の全存在を 賭した表現行為であった>と切り返す。 量数の多寡を求める結果主義の政治世界の行為を、彼は詩人として 根底的な時代感情の側から、全共闘のラデイカリズムを<個の全存在を 賭した表現行為>と見据えるのだ。 私はこの一文を読みながら、被爆者の傷痕の開示に至る行為を思い出していた。 <私>としては、公然と公開などしたくない隠していたい傷痕である。 薄い下着一枚で普通の日常がある。しかしその下には人前に曝せない傷痕が ある。その傷痕を敢えて人の目の前の曝す行為には、<私>を超えた位相が ある。<個の全存在を賭した表現行為>である。 個として類への開かれた<天>に繋がる行為とは、漱石の<則天去私> にも通じる自己本位の位相である。 この<自己本位>とは<個の全存在を賭した表現行為>に通じるものと思う。 政治というただの一ジャンルの領域に閉じられるものではなく、同時代意識と してここまできっちりと指摘出来得る事は、高橋秀明の体験の生々しさ、荒々 しさが経験の深みへと、時代が深まり保水力を保っている事の何よりの証左 なのだ。 ただ単に政治上の過激というラデイカリズムから、同時代としてのラデイカル (根底的)という精神性へとこの論文は切り込んでいるからだ。 この小論文が私に勇気を与えるのは、生きる事を<根底>において <個の全存在を賭した表現行為>として見る視線の故と思う。 この基軸においてこそ初めて世界は、文学的文学、美術的美術、政治的政治 経済的経済の隘路を超えて、コンテンポラリーな同時代の地平を垣間見せる 気がするのだ。 ジョナス・メカスの「リトアニアへの旅の追憶」もまた、<私>に閉じる隘路を越え た<個>の帰還の記録である。 亡命せざるを得なかった<私>の故国への帰還の記録は、個の魂の記録と して、弱い小さな<私>から、見事な<個の全存在を賭した表現行為>として 見る事ができるからである。 亡命先のニューヨークで最初にメカスが映像を発表した時、観客は問うたと言う。 why your image is shaky? because my life is shaky。 (お前の映像は何故こんなに揺れているのか?) (何故なら、私の人生が揺れているからだ) *収蔵品展「境界(さかい)の現場」-9月1日(火)-13日(日) :一原有徳・村上善男・安斎重男・坂口登・黄宇哲・岡部昌生。 am11時ーpm7時:月曜定休・休廊 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2009-09-05 12:36
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