曇天。夏の果て。夏と冬との界(さかい)。
こういう時には、心も閉じる。
過去が現在に実を結び、明日へと開かない。
過去のある一点へと逃げ込むように、潜り込もうとする。
何故ここにいるのか。
殻の心を抱いて、実はどこへ置いてきたのか。
父よ、あなたの遺志はどこへと向いていたのか。
不肖の息子に何を伝えたかったのか。
さっぽろの近代とともに、その人生を終えるにあたり、
その眼差しは何辺へ注がれていたのか。
虚を埋めるように、父の痕をなぞり街と街の挾間を生きたよ。
そして今再び自分の内なる虚と向き合っているのだ。
秋声漂う、秋よ。
もっと透明な風と光で充たせ。
<魂いななき>
夏と冬の界(さかい)を、もっと充たせよ。
現在(いま)を引き裂くな。
秋は喨喨と空に鳴り
空は水色、鳥が飛び
魂いななき
・・・・
多端紛雑の過去は眼の前に横たわり
血脈をわれに送る
高村光太郎の「秋の祈」の一節が浮かんだ。
*「’90年代の作家たちーコレクシヨン展」-8月30日(日)まで。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503