沖縄コザにいるチQさんから便りある。
初の個展を今計画中という。
銀天街市場にある建物をペインテングする試み。
タイトルは、「チQ・蒼穹・Qビズム」。
2日前のテンポラリー通信、センスオブワンダーに触れ、すっきりしたという。
札幌なんかより面積も、人口も少ないコザ市だが、はるかにその人間の密度
は、濃いところと思う。
そういうところで、北海道からふらりと生活場所を移動してきた人間に、
周囲の目は厳しいものがある筈である。
旅行者を見るのとは違う、生活者の眼である。
そこにいる本人自身がきっと誰よりも、その事を実感しているに違いない。
今まで生きてきた札幌が、石狩が問われるのだ。
私の貧しい経験でも、東京にいた時すらそうであった。
まして、沖縄はもっと濃い。
天候、植物、家並み、人間。
これらがみな違う、そして違うと感じる自分の位置を問われるのだ。
次第に慣れてくる日常はあるにせよ、根本のところで、
その相違はクリアされる訳ではない。
日常生活で同化しつつも、どこか心の底で、センスオブワンダー、何だこれは?
と発見しつつ深化するものがある。
違いが違いとして、存在を許容される地平が生まれる。
人と人の関係性に於いても然りだが、ましてアートとなれば、さらに純粋に
その位置が問われるのだ。
特権的な美術館という囲繞された空間ではなく、日常生活のど真ん中で
それらが展示される今回のチQさんの個展においては、一層そうである。
彼が沖縄へ移住して半年。タイトルにある<蒼穹>という青を掴んだ事は、
大きな意味を保っていると思う。
そこに、南と北の一点が窺われるからである。
これは、彼が南の島へ移住し生活しなければ、顕われなかった色と思う。
あの珊瑚礁の島の、空・海の青は、北の島の青とは対極に在るものなのだ。
青を通して純粋に自らの北が問われる。
そしてその<北>とは、彼が生きてきたさっぽろの空の色であり、
水の色でもある。空気の色といってもいい。
環境の変化、周囲の変化は、違いを鮮明にして内向きに問うのである。
曖昧な場のハコの中で安住して惰眠を貪っていた精神が、覚醒するのだ。
それがきっと、生活というものの根源に触れて、<生き生き、活き活き>と
いう本来の<生活>を生む。
生活手段としての下部構造インフラストラクチャーは厳しいだろうが、
本義としての<生活(生き生き、活き活き)>は、真剣に目覚める。
表現者は、その位相から真の生活を始め、センスオブワンダーを創ればいい。
その事総体を含めて、彼のQビズムは始る事だろう。
アルバイトを探し大量に読み漁った求人誌。その時見たラスタカラー(赤・黄・緑)
そして沖縄で強烈に感じた蒼(あお)。
そのふたつの要素から、作品空間を創るという。
<視覚に一番焼きついたふたつの要素によってこの空間は構造されていく。>
構成するとはいわず<構造されていく>と彼が語る時、北と南の経験が真向から
位置されている事を私は感じるのだ。
これが、正しく彼のキュービズムである。
”雪国の華”などとアートツアーをし、他国を渡り歩いている群(ムレ)には
一番欠如した位相であることは確かである。
*「’90年代の作家たちーコレクシヨン展」-8月18日(火)ー30日(日)。
am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503