お盆に入り一夜明けて、今日はもう秋のようだ。
風冷たく、半袖だと寒い。
夏の終わりと、蜻蛉の飛来が告げたよ。
尾道から一時帰郷の野上裕之さんが午後来るという。
祖母のお見舞いで旭川に一昨日来て、これから札幌へ向かうという。
船大工の仕事に就いて最初の帰郷。
あちらでの仕事、そして今後のこと、いろいろ話がしたい。
昨日Sくんと会った。
今月一杯の店舗移転、まだ決まらないという。
予定した場所が駄目になったと言う。
タウンボーイの彼には、ビルパックされた空間ではなく、
もっと界隈性のある空間が望ましい。
路地から路地へつむじ風。
中通り、裏通り、小路、路地裏の入り組んだ路面店の多い街。
一軒、一軒の境が濃く、生活のある界隈。
そんな街角がもう、札幌には少なくなっている。
小洒落な出店のビルパック。敷地一杯に、高く、低くデジタルにぎっしりと
隙間なく埋め立てられたショップパック群。
商品の量数だけが主役の、界隈のない街。
Sくんのような職人さんの店には、馴染まない空間なのだ。
タウンボーイSくんの暑い夏は、まだまだ続く。
昨日の新聞夕刊に、床屋さんが減少していると報じられていた。
美容室は増えているが、町の床屋さんは減っていると。
ここにも都市空間の変化がある。
男は床屋、女は美容室と相場が決まっていたものが
理容室から美容室へと変化しつつある。
カリスマとか言われて、美容室の方が成り手が多いそうだ。
床屋談義とかいう言葉も死語と成るのかも知れない。
風呂屋が消え、床屋が消え、判子屋が消え、個性ある店主が消え、
界隈が消え、人間が分別されてショップになるのも現代である。
どこかでその反動が出て、オタクぽい街路が出現するのかも
知れない。しかしそれも、ファッシヨン。
なんとかイーストとか言われても、うそ臭いのだ。
街には本来その界隈の匂いがある。
そこを裏付けとして保たない限り、本物は根付かない。
野上さんの尾道船大工。佐々木恒雄さんの網走漁師。
岡和田直人さんの帯広ペンキ職人。
札幌には何がある?
8割テナントの出店街。夕張は他人事ではないのが実状。
自給率低下は食だけの問題ではない。
文化の裾野を見詰めずして、高峰の白雪ばかり見ていたら、
タワー系ビル群、ショップパック群とどこが違うのか。
Sくんの戦いは、都市の価値観の基軸に触れる戦いでもある。
生活の裾野を侮ってはならない。
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