ニューヨーク在住の中岡りえさんから、メールが届いていた。
・・(「明がらす」の)今は亡き松田ハツミさんに可愛がられました。
・・・ハツミさんはご主人が急死したため、大変な思いをして、
あけがらすをお嬢さん方とつづけてこられました。
亡くなられて、私がお出したお手紙、絵葉書などが
7センチほどリボンできちんと結ばれて、育子さんから届きました。
昨日の「遠野・明がらす」のブログを読み、
まつだ松林堂のものではないか、と始る文面だった。
ハツミさんの娘さん育子さんとは親友だったという。
栞を見ると、確かにまつだ松林堂元祖明がらす、と記されている。
お菓子ひとつにも歴史があり、そこに触れる個人的な理由(わけ)がある。
そういえば、中岡りえさんのテンポラリースペース最初の個展カタログは、
詩人・美術評論家の岡田隆彦さんに寄稿して頂いている。
岡田隆彦さんももう故人だが、岡田さんは、吉増剛造さんの学生時代から
の親友なのだ。
吉増さんの岡田隆彦追悼文は、<”疲れた鯨”ー親友の死に>と題され、
’97年4月15日付産経新聞夕刊に掲載されている。
この中で、”疲れた鯨” ”鯨、疲れた・・・”という一節があり、
その哀切な文章に心打たれたのを、思い出していた。
岡田隆彦さんの自宅には、昔W大の新聞部にいた時、原稿を貰いに行った事
がある。本人はお留守で、冷たい感じの女性が原稿を手渡してくれた。
後でこの女性が、岡田さんの詩集「史乃命」で有名な人であると知る。
点のようにある記憶が、今またお菓子ひとつを通して、こうして人と人を結ぶ
のである。
遠い縁(えにし)とは、過去という土壌の中から種子のように咲き出す。
そこに、現在(いま)がある。
この時間の美しい土壌を、決して今という境界で分断・分別してはならない。
<7センチほど、リボンできちんと結ばれ・・届きました>
そんな<リボン>のような時間の花束を、中岡さん、ありがとうございました。
*テンポラリースペースアーカイブス展ー8月7日(金)まで。
am11時ーpm7時
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503