足の攣りが治まったら、腰を捻る。
続くねえ、悪い事は。
先日来たM・Mさんは、さらに帰り道良い事があって、
いい事は続きますとメールがきた。
こちとらは、悪い事続きます。
腰には歩き。
自転車を置いて、歩く、歩く。
梅雨のような気候が、このところ夏空。
汗ばむ日々。
舗道の照り返しを避け、路地、小路を歩く。
土の残る道は少ないが、時にある。
靴裏が柔らかく、身体を吸収してくれる。
蔦の種子も、こういう処に着地したかったのだろう。
土に還れず、土に根づけず、さらさらと塵灰に等しく分別(ブンベツ)。
エルムトンネルの上、なんの木の綿毛だろうか、今日も飛んでいた。
白い精子のように着床を求め、彷徨っている。
歩き透んで、人間も植物も同じ漂流するものと、感じていた。
さっぽろ8月、束の間夏日幻実。
7月末まで退去のSくんの店。8月中目途に移転のよう。
そういえば、旧テンポラリー裏Aアパートも取り壊されるそうで、
そこにアトリエを構えていたY女史も移転したと聞いた。
年内は荷物に囲まれ、仕事にならないわとぼやいていた。
木造のひなびたアパート、作家が集り、アトリエ部落のようになればと、
一時考えた事もある。
あの頃は漢字の名前のアパートが多かった。
円山北町、昭和の時代。
2階建ての漢字名のアパートが消えて、英・仏・独・伊、スペイン語も入るか、
辞書片手に意味を調べなければ解らない名称の高層マンシヨンが増え、
街は変わった。
その最後の1棟があの街角から消えた。
またひとつ空が狭くなる。
さっぽろメタボリック症候群。人口北海道の約半分に迫る。
石狩地方じゃないよ。サッポロエリア限定である。
それを進歩・発展と慶び、文化の発信地と位置付けるアートブローカーに
百年前の森鴎外の遺言<石見の国の住人森林太郎として死す>の気概を
知らしめたい気がする。
石狩の国を知らず、サッポロアートとは何ぞや。
固有のさっぽろを消去し、グローバルメタボのサッポロとは、鹿鳴館日本
の再来、同構造である。
<則天去私>の夏目漱石は、<私>を<天>という時代の個に高めようと
した。その<個>もなく、<石見の国>という土壌もなく、国際化に走狗する
サッポロブンメイ、ブンカ。
百年間の喪失・消去の不毛を観ぜよ。
生命の綿毛が、白い泡沫となり、汚れた塵灰となる。
ふわふわから、フワフワへ。
綿毛は、ビニール、プラステイック塵灰?
歩き深め、歩き透んで、腰の痛みは去ったが、
白い綿毛、緑の種子は、なおも精神(こころ)の舗道を漂流している。
*テンポラリースペースアーカイブス展ー8月7日(金)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503