夜帰る時、パラパラと音がして何かが降ってきた。
雨かなと思うが濡れていない。
蔦の種子が落ちてきたのだ。
朝見ると、戸口のアスファルトが一面緑の絨毯のようになっている。
よく見ると、時の経ったものは土に還れず茶色に変色している。
蔦の繁殖なのだなあ、あの音は。
夜暗くなってから、身を震わせ種を撒くのだろうか。
実も段々膨らんできて、これが黒く粒々の果実になる頃、
夏も終わりへ近付く。
植物辞典を見ると、この樹液を煮詰めシロップができるという。
「これは、蜂蜜などと共に古い時代の大切な甘味資源であった」
(原松次「北海道植物図鑑」)
そういえば、蔦の果実は葡萄のようで、いつも美味そうだなと思っていたのだ。
春、ポプラの綿毛が飛び、路辺を埋めていた。春の終わりに近く。
夏、蔦の種子が散り、路上を緑に埋める。夏の盛りを超えてなのか。
季節という時間は、間違いなく動いている。
そして久し振りに、一族という言葉を思い出していた。
お盆も近付き、仏壇に向かった所為もある。
母方の一族、父方の一族。
なになにちゃんと、呼んでいた従兄弟のことを思い出す。
伯父さん、伯母さん、みんな遠くなった。
兄弟すら遠くバラバラ。
祖父の時代は、祖父の子供がたくさんいたから、正月・お盆にはよく
従兄弟が集ってきた。みんなでお寺に行き、帰ってスイカを食べた。
時々、祖父や父が仏壇に向かいお経をあげているのを、
不思議な気持ちで見ていた。
今自分がひとり、その仏壇に手を合わす。
近く死んだ順に写真を見る。カネを鳴らす。
数珠がバラバラと、蔦の種子のように思える。
<一族>。ばらばら、バラバラ。
俺も蔦のように一族背負って、ばらばら、ばらばら。
緑の種子を散らばしているのか。
このアスファルトの不毛な大地にと、ふと思う。
*テンポラリスペースアーカイブス展ー8月7日(金)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休・休廊
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503