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テンポラリー通信

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2009年 07月 18日

ひと刷け、ひと刷けー朱夏(17)

ペンキ缶もふたつ目になり、ひと刷け、ひと刷け、
丹念に岡和田さんが壁を塗っている。
M夫人がお握りとおかずを差し入れてくれる。美味い。
沖縄のチQさんから電話。
昨日のブログを読んで、来沖を確認する為だった。
近況を色々聞く。
気温は高いけれど、さっぱりして気持ちいいという。
風が通るからだ。
ただ植物の勢いが凄い。ここでは植物は肉食系だという。
そうか、草食系ではないんだ。
なんとなく分かる気がした。
女性も強いよという。男も強いけれど、女性が逞しい。
この間も70歳を過ぎた女の人が、これから老後の蓄えに働いて
お金を貯めるのだと聞いて吃驚した。
きっと第一線なんだなあ。それってすごくいい事じゃないか。
生きる現場があるから、常に第一線である。
ひと刷け、ひと刷けの人生じゃないか。

役所に勤めるKさんが、時計台の敷地にオオウバユリを植え、
花が開いたとミクシイのブログに記している。
<咲いた!>という文と、写真だけだが、
その後写真家のM夫人が早速出かけ、撮影したものが記載された。
時計台の壁を背景にくっきりと薄緑の大ぶりの花が写っていた。
さらに花のアップがあって強烈である。
時計台の木造の白い壁、野生を思わせるオオウバユリ。
これって、正しくさっぽろ。
近代の洋館と原生種の風景である。
周囲は高層ビル群だが、この一角は優れて近代である。

♪この道はいつか来た道 ああ そうだよ あかしやの花が咲いている
 あの丘はいつか見た丘 ああ そうだよ ほら白い時計台だよ
 この道はいつか来た道 ああ そうだよ お母さまと馬車で行ったよ

北原白秋が見たさっぽろの風景にも、きっとオオウバユリが路傍の陰のどこかに
白い花を咲かせ、風に揺れていたのかも知れない。
今、反措定のように歴史的建造物として保存されているビルの谷間の時計台に、
原生自然のオオウバユリを咲かせようと努力したKの志は、職務をちょっとだが
超えて、心のファインな花を咲かせたのである。
これも現場の第一線の生き様である。
時計台という先人の和と洋の結晶、その洋館という様式はさっぽろに相応しい
風景である。西洋の丸写しではなく、そこに棟梁の技術が格闘して日本独特の
洋館という建築物を生んだからだ。
その汗の部分だけ、自然も生きている。
場を抜きに、効率性のみを重んじる現在の建築物とは一線を画すものがある。
だから、現在の建築物にオオウバユリは似合わないのだ。
私が唯一さっぽろという都市に似合うものがあるとすれば、正当な近代とでも
呼ぶそうした伝統である。
それすら現在は破壊され、無機質なタワー系の高層ビルで埋め立てられている。
人口の多寡を誇り、道都・道央などと固有のさっぽろを消去し、金魚鉢のような
サッポロにしてきたのが、現在の札幌である。
市長は声自慢で、ブンカ、ブンカとカラオケ自慢のようだが、旧厚生年金会館を
ゲイブン・芸術と文化の館などと命名してさらに得意気のようだ。
だが市庁舎は、一番最初に時計台を眼下に埋めた高層ビルである。
時計台のある風景を埋め立てた元凶である。
ブンカ、ブンカとお囃子のように唱えるが、時の保水力を喪失させて、真の文化
など在りよう筈もない。
カラオケブンカと白秋の「この道」に見る世界は決定的に相違するのだ。

*7月19日(日)まで休廊
*7月21日(火)-8月7日(金)テンポラリーアーカイブス展

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-07-18 13:32 | Comments(2)
Commented by ジュンコ at 2009-07-18 21:58 x
デメーテルで会った岡和田君の名前と生き様がブログで察せられて、妙に嬉しい昨今です。
おとといだったか、私もチQくんから電話を頂いて、能動的サバイバルな話に疑似沖縄体験をしたようでした。
私の今住んでいる町には「粕取り焼酎」という酒粕からさらに焼酎を作っている酒造があります。
今度、持っていきますね。
「カラオケブンカ」的からっぽな味が面白いから。
Commented by テンポラリー at 2009-07-19 11:24 x
ジュンコさん>なんか、(カス)トリとは、すごい名前ですね。
そういえば、チQさんが言ってたけれど、痩身に挑戦とか・・。
これも別の意味でのカストリかしらね。
いつか一緒にまた飲める日楽しみにしてます。


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