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テンポラリー通信

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2009年 07月 03日

投手と捕手ー朱夏(4)

優れた表現者には、優れた受け手がいる。
野球でいえば、優れた投手に優れた捕手、
サッカーでいえば、すぐれたフォワードに優れたゴールキーパー
がいるようなものだ。
投げられた作品という球を、しっかり受けとめ、返す。
そんな存在を先日の及川恒平さんのライブの時にも、感じた。
Eさんというキューレーターの方である。
控え目ながら、しっかりと存在感のある女性だった。
こういう人を見ていると、受け手は同時に優れた投げ手でもある事
をも強く感じるのだ。

大阪・AD&Agallery制作のDVD谷口顕一郎”The Trail Hekomi”が届く。
作家が自作を製作現場、作品を通して語るドキュメント映像である。
1月大阪の谷口顕一郎展会場で一部モニターで流されていた映像を
さらに手を加え完成させた労作だ。
壁の傷痕や路上の亀裂を、形として自立させ、独自の形象に作り上げていく
過程が、作家の語りとともに新作・旧作を交え丁寧に映像化されている。
一緒に見ていた中嶋幸治さんが、見終えて声をあげた。
”ケンちゃん、もう涙が出そうだ、今日はこれで帰るかな”
1月大阪でお会いした梅田と神戸出身の若いキューレーターふたりの顔が
浮かんだ。ここにも、優れたキャッチャーがいる。
彼等が受けた谷口顕一郎の作品という球は、今こうして見事な返す球となって
ここに在る。
この感受性のキャッチボールの空間に、同時代の場というグランドが在るのだ。
そしてその場に今私たちは立ち会っている。
作家という投手とキューレーターというキャッチャーは、ともに同じグランドで
作品という球の軌跡を創り、共有している。
その時空が今、ひとつの形となっていた。
ピッチャー崩れが、キャッチャーを兼用するかのような、境(さかい)曖昧不在
のアートエヴェントが横行する中、むしゃくしゃしていた気持ちがすっと消えた。
しっかりとした輪郭を保って、作家の顔とキューレーターの顔が浮かんだ
からである。
作品という球は見事な軌道を描き、それを心のバットが振り抜いているからだ。
このDVDは、X塁打だぜ。ケンちゃん、南なつさん、小西小多郎さん。
この作品DVDは球となって、先ず最初にさっぽろで私と中嶋さんの心に届き、
新たなキャッチボールが始っているのだ。
中嶋さんが思わず、ケンちゃんと呟いたのは、その新たなグラウンドの始まり、
魂へのキックオフだったのだろう。

*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-7月5日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*中川かりん展ー7月7日(火)ー12日(日):絵画による展示。
 12日(日)午後6時~25絃筝演奏ライブ・入場料1500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2009-07-03 15:09 | Comments(0)


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