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テンポラリー通信

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2009年 06月 18日

花屋敷の夢ー風のRondo(15)

役所勤めのK氏が来る。オオウバユリの話をした。
時計台の敷地に咲かせたいという。
他に旧偕楽園跡地、永山武四郎邸と近代を代表する数少なくなった洋館
に札幌固有種の山野草を咲かせたいというのが、彼の夢だ。
大通り花壇と同じじゃないかという反論もあるようだが、あくまで自然の再生を
彼は考えている。ビルの谷間にある洋館建築。そこに山野草の花が咲き乱れる
のは、自然の花壇化といわれれば、それはそうかも知れない。
しかし、その相反する風景こそ、人間が創る文化なのだ。
バーチャルリアリテイーである。虚が実を撃つ。
役所の仕事をしながら、個としてちょっとだけはみ出す。
そんなファインな心が私は好きだ。
文化財を管理し清潔に保ち、つつがなく職務をこなす。
しかしそこに夢として、本来の土が、大地が、森が、夢見られる。
それは花壇の綺麗さとは違うものである。
先人が謳った寮歌の一節。

 牧場の若草陽炎燃えて、森には桂の新緑萌し、
 雲ゆく雲雀に延齢草の、 真白の花影さゆらぎて立つ

そんな喪われた風景を都市の洋館の僅かな敷地に夢見る。
その夢自体がバーチアルである。
しかし、それゆえにこそ、現実を撃つリアリテイーも生む。
正反対の状況が磁場となり、深い裂け目のリアリテイーを幻視させるからだ。
文化財として区分けされ、管理され、分別されるだけではない
境界(さかい)が生まれるからである。
かって泉池があり、鮭の孵化場でもあった旧偕楽園。
清華邸として保存されたかっての洋館サロン。
その敷地を花屋敷として再生するのも夢だと言う。
この日横浜の大野慶人さんから、人づてに便りがあった。
父上の大野一雄さんが石狩河口で踊り、子息の慶人さんにはいつかさっぽろ
で踊っていただきたいと思っていた。
故郡司正勝さんの慶人さんに遺された遺作公演を、いつかさっぽろで実現したい
と思っていた。さっぽろ薄野生まれの郡司先生と、北原白秋の歌曲「この道」を
愛する慶人さんの為に、相応しい場所を考えていた。
ああ、花屋敷がいいなとK氏に話した。
石狩の海と繋がるさっぽろの場が見えてきたからだ。
K氏の職務をちょっと超える夢が、私の夢とリンクしてくる。
ただの花壇なら、こうした心のオーバーフェンスは生まれない。
ファイン役人K氏と話し続けて、お酒を重ねて夜が深けた。

*チQ沖縄からのポストカード展「まちぐゎー69」-6月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時
*中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」-6月23日(火)-7月5日(日)
*及川恒平フォークライブ「TASOGARE」-6月28日(日)午後6時半~
 入場料3000円・予約2500円
*中川かりん展ー7月7日(火)-12日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

 

by kakiten | 2009-06-18 12:59 | Comments(2)
Commented by kuma at 2009-06-19 01:31
昨日は楽しい話ありがとうございました。
今日も酔っ払いです。アー辛。
Commented by kakiten at 2009-06-19 10:36
くまさん>こちらこそ、カルチヴェートなお話
ありがとうございました。ともにまた、ファインな夢に
タッチしましょう!
日々辛い日常を耐えながらね。


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