包む時間ー風のＲｏｎｄｏ（１１）

次回展示予定の中嶋幸治さんが来る。
出来上がった個展ＤＭを持って来た。
タイトル「エンヴェロ－プの風の鱗」
エンヴェロープ、封筒のことである。
ケイタイやメール、封筒の要らない通信手段が発達して、
伝えるものを包むもののない世の中である。
スリラーの巨匠ヒッチコックが、かってこんな事をいっていた。
私にとっての最大のスリルは、恋人に手紙を書き、その手紙が見知らぬ他人
の手を経て届くまでの時間が、最大のスリルなのだ、と。
この時想いを包む封筒の存在が、唯一その中味を安全にしてくれるものだ。
包むという間接的な、一見無駄なような存在。
外と内を繋ぐ間（あいだ）の存在。
この界（さかい）の豊かさを、彼の表現としての封筒は、
きっと示唆するものとなるだろう。

ﾁＱさんのポストカード、そして中嶋さんのエンヴェロープと、
個的な郵便の形式が、同時代的の再生の様式として復活するのが
面白い。
他者との間に何かに託して、そっと届ける行為をいつのまにか私たちは、
置き忘れて来つつあるようにも思えるから。
心を包んでいる体。
お酒を包んでいる器。
これはパックではない。包み、包んでいるのだ。
思えば地球もまた、水と大気が包む命の惑星である。
生きる事も何かに包んで、そっと他者へと差し出す行為なのかも知れない。
プラグマチックな生活の現実のなかで、中嶋さんの封筒表現は、
きつと生きる勇気を包んで、今を差し出すに違いない。

＊チＱ沖縄からのポストカード展「まちぐわ　６９」－６月９日（火）－２１日（日）
　ａｍ１１時ーｐｍ７時：月曜定休・休廊
＊中嶋幸治展「エンヴェロープの風の鱗」－６月２３日（火）－７月５日（日）
＊及川恒平フォークライブ「ＴＡＳＯＧＡＲＥ」－６月２８日（日）午後６時半～
　入場料３０００円・予約２５００円

　テンポラリースペース札幌市北区北１６条西５丁目１－８斜め通り西向
　ｔｅｌ／ｆａｘ０１１－７３７－５５０３